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2024-11-04

プリゴジン死去

Le leader de la formation paramilitaire, Evgueni Prigojine, est mort dans un avion qui s’est écrasé en Russie.

少し前の記事。ロシアでエフゲニー・プリゴジンの乗った飛行機が墜落した事件の記事からです。(2023.8.23)

→ Prigojine, le patron de Wagner, tué dans un crash aérien

 

【おおまかな発音】

Le leader de la formation paramilitaire, 
ル リドゥール ドゥラフォルマシィオン パラミリテール

Evgueni Prigojine
エフゲニ プリゴジヌ

est mort dans un avion
エモール ダンザンナヴィヨン

qui s’est écrasé en Russie
キセテクラゼ アンリュスィ


【語句】

leader : リーダー, 指導者。男性名詞。英語からきた単語。発音は「リドール」ってかんじなので注意。

formation :  女性名詞(-tionで終わる名詞は女性名詞)。組織、グループ、(軍隊の)部隊。

paramilitaire :  軍隊式の。formation paramilitaire で「軍隊組織」というかんじか。

Evgueni Prigojine: ここは直前の Le leader de la formation paramilitaire と同格。「軍隊組織のリーダー(である)エフゲニー・プリゴジン」。

est mort : mourir(死ぬ)の複合過去、「死んだ」。主語は Le leader 。

dans un avion : 「飛行機(内)で」。

qui s’est écrasé : qui は関係代名詞、先行詞は直前の un avion。つまり、「s’est écrasé した飛行機」。

s’est écrasé : 代名動詞 s'écraser(砕ける、墜落する) の直説法複合過去、「墜落した」。 écraser は「押しつぶす」「砕く(くだく)」。

en Russie : 「ロシアで」


【試訳】

Le leader de la formation paramilitaire, Evgueni Prigojine, est mort dans un avion qui s’est écrasé en Russie.

軍事組織のリーダー、エフゲニー・プリゴジンが、ロシアで墜落した飛行機に乗っていて死亡した。


(ここまで)


あんたたち、どこにいたんだ?

« Où étiez-vous ? » : à Valence, après les inondations meurtrières, la colère explose face au roi, Felipe VI, et au premier ministre, Pedro Sanchez 


スペインのバレンシアで大きな洪水がありました。その被害についてのルモンドの記事(2024.11.3)のタイトルです。

« Où étiez-vous ? » : à Valence, après les inondations meurtrières, la colère explose face au roi, Felipe VI, et au premier ministre, Pedro Sanchez 


【おおまかな発音】

« Où étiez-vous ? » : 
ウ エティエ ヴ

à Valence, après les inondations meurtrières, 
ア ヴァランス、アプレ レズィノンダスィヨン ムルトゥリエール

la colère explose face au roi, Felipe VI, 
ラ コレール エクスプローズ ファス オ ロワ、フェリペ スィス

et au premier ministre, Pedro Sanchez 
エ オ プルミエ ミニストル、ペドロ サンチェス


【解釈】

Où étiez-vous ? 「あなた(がた)はどこにいたのですか?」

étiez は être の半過去。

à Valence 「バレンシアで」

Valence はスペインのバレンシア地方。地中海に面しています。


après les inondations meurtrières 「多くの人が亡くなった洪水のあとで」

inondation 「洪水」(女性名詞)。動詞 inonder は「水浸しにする」。

meurtrière、形容詞 meurtrier の女性形。「人殺しの」「多くの人命を奪うような」。名詞は meurtre 「殺人」(男性名詞)です。


la colère explose face au roi  怒りが王に向かって爆発する

exploser 「爆発する」。

スペインには王様がいます。


怒りの矛先は「王」だけではなく...、

face au roi, Felipe VI, et au premier ministre, Pedro Sanchez 
 「スペイン王のフェリペ6世、そして首相のペドロ・サンチェスに向けて」

Felipe VI 「フェリペ6世」(在位 2014年6月~)。 直前の le roi の「同格」。

premier ministre 「首相」。

Pedro Sanchez  スペイン首相(2018年6月~)。


【試訳】

« Où étiez-vous ? » : à Valence, après les inondations meurtrières, la colère explose face au roi, Felipe VI, et au premier ministre, Pedro Sanchez 

「あんたたち、どこにいたんだ?」 バレンシアで、多数の死者の出た洪水後、スペイン王フェリペ6世と、首相ペドロ・サンチェスに怒りが爆発。


この怒りの原因は、救援の対応の遅れ、とくに党派間の駆け引きと、役所間の権限配分だとこの記事に書かれています。


(ここまで)

2024-06-24

人間と超人(ニーチェ)

L'homme est une corde tendue entre la bête et le Surhumain, — une corde sur l'abîme. Il est dangereux de passer au-delà, dangereux de rester en route, dangereux de regarder en arrière, frisson et arrêt dangereux.

[Nietzsche, "Ainsi parlait Zarathoustra", Traduction par Henri Albert ]


ドイツの思想家ニーチェ(1844-190)の「ツァラトゥストラはこう語った」の仏語訳より。


◆ 逐語訳

L'homme est une corde 人間は一本のロープだ tendue entre la bête et le Surhumain 獣と超人の間に張られた(一本のロープだ), — une corde sur l'abîme 深淵の上のロープだ. Il est dangereux ~するのは危険だ de passer au-delà 向こうに渡る(のは危険だ), dangereux de rester en route 途上にとどまるのは危険だ, dangereux de regarder en arrière 後ろを見るのは危険だ, frisson et arrêt dangereux 危険な震えと停止だ.


◆ 訳例

人間は、けだものと超人との間に張られた一本のロープ、深淵の上に張られたロープだ。渡るのも危険、立ち止まるも危険、振り返るも危険、身震いも停止も危険だ。 [ニーチェ『ツァラトゥストラはこう語った』]



(以上)


2024-05-26

ヘルダーリンという存在のきらめきは

René Char の "La Conversation souveraine" から。


Le scintillement de l’être Hölderlin finit par aspirer le spectre pourtant admirable du romantisme allemand. Nerval et Baudelaire ordonnent le romantisme français entrouvert par Vigny et gonflé par Hugo. Rimbaud règne, Lautréamont lègue. Le fleuret infaillible du très bienveillant Mallarmé traverse en se jouant le corps couvert de trop de bijoux du symbolisme. Verlaine s’émonde de toutes ses chenilles : ses rares fruits alors se savourent.


◇ むずかしいけど訳してみました。

ヘルダーリンという存在のきらめきは、最後に、ドイツ・ロマン主義の亡霊 ― とはいえ感嘆すべき亡霊 ― を吸い込む。ネルヴァルとボードレールは、ヴィニーによって開かれ、ユゴーが膨らませたフランスのロマン主義を整える。ランボーは君臨し、ロートレアモンは遺贈する。好意に満ちたマラルメの無謬の剣は、象徴主義の宝飾で過剰に覆われた身体を、軽々と貫く。ヴェルレーヌは自分の身体から、象徴主義の青虫を一匹残らず剥ぎ取る。だから彼の見事な果実はゆっくり味わって食べられる。


◇ ここに出てきた人たちの生没年です。

.. Hölderlin : 1770-1843

.. Nerval : 1808-1855

.. Baudelaire : 1821-1867

.. Vigny : 1797-1863

.. Hugo : 1802-1885

.. Rimbaud : 1854-1891

.. Lautréamont : 1846-1870

.. Mallarmé : 1842-1898

.. Verlaine : 1844-1896


◇ 同じ箇所の以下の訳文が、中嶋美貴「ルネ・シャール、〈基底〉への形式上の反抗」(WASEDA RILAS JOURNAL NO.2 (2014.10))にあります。参考にさせていただきました。

「へルダーリンの存在のきらめきは、ドイツロマン主義のそれでもやはり素晴らしい効力範囲をついに吸い込むに至る。ヴィニーによって開かれ、ユゴーによって膨らまされたフランスロマン主義をネルヴァルとボードレールは整える。ランボーは支配し、ロートレアモンは次世代に伝える。マラルメのとても好意的な不謬の剣は、象徴主義のあまりに多くの宝石で覆われた身体を演じながら通過する。ヴェルレーヌは芋虫たちを自らそぎ落とす、つまりそれゆえ、そのとき彼の稀少な果実は風味豊かなものとなる。」


(2024.05.26)

 

2023-06-27

10分だけのマイクロデートで愛を持続させる

Pour faire durer l'amour, il suffirait d'organiser régulièrement des "micro-dates" de 10 minutes avec son partenaire.

女性向け(って言っていいのか...?)雑誌、Marie Claire のWebサイトの記事のタイトルからです。

※ 元記事 → Pour faire durer l'amour, il suffirait d'organiser régulièrement des "micro-dates" de 10 minutes avec son partenaire - Marie Claire 


【おおまかな発音】

Pour faire durer l'amour
プール フェールデュレ ラムール
il suffirait d'organiser régulièrement
イルスュフィレ ドルガニゼ レギュリエールマン
des "micro-dates" de 10 minutes
デミクロダット ドゥディミニュット
avec son partenaire
アヴェク ソンパルトネール

【分かち訳】

Pour faire durer l'amour 愛を持続させるためには, il suffirait ~すれば十分だろう d'organiser régulièrement 定期的に計画す(れば)des "micro-dates" de 10 minutes 十分間のマイクロデートを avec son partenaire 自分のパートナーとの


【語彙】

durer は「持続する」、faire durer ~ で「~を持続させる」。この faire は「使役動詞」。

il suffirait の suffirait は動詞 suffire(十分だ、足りる)の条件法現在形。「十分だろう」。

ここでは「条件」は、d'organiser 以下の部分。主語の il は非人称主語。〈Il suffit de + inf.~〉で「~するだけで十分だ」。

※ inf. は不定詞(動詞の原形)のこと(infinitif)です。

organiser 「組織する」「準備する」「計画する」。

régulièrement 「規則正しく」「定期的に」。

micro-dates は「マイクロデート」と訳しときました。よく使われる単語なのかな?

des "micro-dates" の des は不定冠詞の複数形。


【試訳】

愛情を持続させるには、パートナーと10分間の「マイクロデート」を定期的に企画しさえすればいいだろう。

(以上)

2023-06-11

老いるのは楽しいね(ソレルス)

J'aime vieillir et je n'ai pas peur de ma propre mort.

France Inter のページ、先月(2023年5月5日)亡くなった作家 Philippe Sollers(フィリップ・ソレルス) インタビュー音声のタイトルからの引用です。

   → L'agent secret de Philippe Sollers : "J'aime vieillir et je n'ai pas peur de ma propre mort" : épisode 1/2 du podcast Philippe Sollers, autoportrait 


【発音】

J'aime vieillir
ジェムヴィエィール

et je n'ai pas peur de ma propre mort
エ ジュネパプール ドゥマプロープルモール


【解説】

◆ J'aime vieillir 「私は老いるのが好き」。

〈aimer + 不定詞〉で「~するのが好き」。

vieillir は「老いる」。

◆ et je n'ai pas peur de ... 「そして私は...が怖くない」。

〈avoir peur de ...〉「...が怖い」。

peur は「恐怖」「不安」(女性名詞)。

◆ ma propre mort 「私自身の死」。

propre は、名詞の前において、所有形容詞(今回は ma )といっしょに使われると、「~自身の」という意味になります。


【訳例】

J'aime vieillir et je n'ai pas peur de ma propre mort.

私は老いるのが好きだ、そして自分自身の死が怖くない。
   ↓
老いるのは楽しいね、それに自分が死ぬのも怖くない。


(ここまで)


2023-06-05

また雨が降っていた

La pluie tombait de nouveau mais elle était si fine qu'elle mouillait à peine les cheveux.

[Modiano, "Une Jeunesse"]


Patrick Modiano(パトリック・モディアノ)というフランスの作家(1945年生 / ノーベル文学賞受賞)の小説『ある青春』の一文です。

※ Gallimard版(2020)の 23ページにあります。


【発音】

La pluie tombait de nouveau 
ラプリュイ トンベ ドゥヌヴォ

mais elle était si fine 
メ エレテ シィフィヌ

qu'elle mouillait à peine les cheveux
ケルムイエ アペヌ レシュヴゥ


【分かち訳】

La pluie tombait 雨が降っていた de nouveau ふたたび

mais でも elle était si fine それ(その雨)はとても細かったので] 

qu'elle mouillait それ(その雨)は濡らしていた à peine ほとんど...ない

les cheveux 髪を


【語句】

この文の動詞(述語動詞)は tombait, était, mouillait の3つ。

それぞれ不定詞は tomber(落ちる), être(~である), mouiller(濡らす)。

いずれも直説法半過去形で、主語は la pluie とそれを表してい人称代名詞の elle、つまり主語は3人称単数。

elle était si fine qu'elle mouillait ... は〈si ~ que ...〉、「とても~なので...だ」のパターン。

fine は形容詞 fin 「細かい, 細い」の女性形。

elle mouillait à peine les cheveux は à peine(ほとんど...ない) があるので「その雨は髪をほとんど濡らさなかった」


【日本語訳】

La pluie tombait de nouveau mais elle était si fine qu'elle mouillait à peine les cheveux.

雨が再び降っていた、しかしその雨はとしても細かったので、その雨は髪をほとんど濡らされなかった。

  ↓

また雨が降りだしていたが、とても細かな雨だったので、髪が濡れることはなかった。


(ここまで)


2023-02-27

彼がしてくれたことはもうだれにもできないだろう

 «Ce qu'il a fait pour nous, plus personne ne le fera»: des milliers de Brésiliens font leurs adieux à Pelé

サッカーの王様、ペレが昨年(2022年)12月末に亡くなりました。

ペレを悼むブラジルの人たちを伝える、フランスのニュースサイト RFI の 2023年1月2日の記事のタイトルです。

«Ce qu'il a fait pour nous, plus personne ne le fera»: des milliers de Brésiliens font leurs adieux à Pelé


【発音の確認】

Ce qu'il a fait pour nous
スキラフェプールヌ

plus personne ne le fera
プリュペルソヌ ヌルフラ

des milliers de Brésiliens 
デミリェドゥブレズィリァン

font leurs adieux à Pelé
フォンレールザディウアプレ


【文の意味】

01) Ce qu'il a fait

〈ce que S+V…〉で「SがVすること・もの」。英語だと〈what S+V…〉。

Ce qu'il a fait で「彼がやったこと」。

a fait は動詞 faire(する・やる)の複合過去。 fait は faire の過去分詞。


02) Ce qu'il a fait pour nous 

「彼が私たちのためのやったこと・してくれたこと」。


03) plus personne ne le fera

fera は動詞 faire の単純未来形。

活用を確認しておきましょう。

  je ferai (ジュフレ)
  tu feras (テュフラ)
  il fera (イルフラ)
  nous ferons (ヌフロン)
  vous ferez (ヴフレ)
  ils feront (イルフロン)


plus personne ne le fera の 最初の plus は ne ... plus(もはや...ない)の plus が前に出たもの。plus (もう、もはや)が強調されている感じでしょう。

personne は ne と組み合わさって「だれも...ない」

le fera の le は直前の ce qu'il a fait pour nous「あの人が俺たちのためにしてくれたこと」を受ける代名詞の le です。

ですので、plus personne ne le fera は「もうだれもそんなことをしてくれないだろう」。


04) Ce qu'il a fait pour nous, plus personne ne le fera

「彼が私たちのためにしてくれたこと、もうだれもそれをやってくれないだろう」。

「あいつが俺たちにしてくれたことはもうだれにもできないだろう」。


04) des milliers de Brésiliens 

「何千もの(多数の)ブラジル人たちが」。

millier は「千くらい」(男性名詞)。

この箇所は次の font (< faire)の主語ですね。


05) des milliers de Brésiliens font leurs adieux à Pelé

「何千ものブラジル人たちがペレに別れを告げています」。

adieu は「別れの言葉」(男性名詞)、複数形 adieux 。

〈à + Dieu〉つまり、「神のところで(また会いましょう)」が語源だと思うので、adieu は、相手ともう会わないときに使います。

スペイン語の adiós も同じように使うみたいです。

ずっと昔フランスで友達になったポーランド人の女性(フランス語話者)から、私が日本に帰るとき ” Adieu ! ” って言われて、あ~、adieu ってこういうときに使うのか、もう会わないつもりなんだな、ってちょっと悲しくしっくり来たのを思い出します。その女性の青い目が深かったです...。

faire ses adieux à ... で「...に別れの挨拶をする」。

06) «Ce qu'il a fait pour nous, plus personne ne le fera»: des milliers de Brésiliens font leurs adieux à Pelé

「彼が私たちにしてくれたこと、それと同じことをやれる人はもうだれもいないだろう」と、何千ものブラジル人たちがペレに別れを告げています。


(ここまで)

2022-12-04

高橋留美子を知ってますか

Connaissez-vous Rumiko Takahashi ? Si son nom ne vous dit rien, vous vous souvenez certainement de "Juliette je t’aime" ou "Ranma ½"…  


France Culture (文化に特化したラジオ局)の放送の説明文からです。

タイトルは、” Qui est Rumiko Takahashi, la mangaka la plus lue au monde ? ” 。

  → Qui est Rumiko Takahashi, la mangaka la plus lue au monde ?


◆ おおまかな発音を確認しておきましょう。

Qui est Rumiko Takahashi, 
キエリュミコ タカアシ

la mangaka la plus lue au monde ?
ラマンガカ ラプリュリュ オモンド

Connaissez-vous Rumiko Takahashi ? 
コネセヴ リュミコ タカアシ

Si son nom ne vous dit rien, 
スィソンノン ヌヴディリャン

vous vous souvenez certainement 
ヴヴスヴネヴ セルテネマン

de "Juliette je t’aime" ou "Ranma ½"…  
ドゥジュリエット ジュテム ウ ランマ アンドゥミ


◆ いみ

01a) Qui est Rumiko Takahashi,

・髙橋留美子とはだれか

01b) Qui est Rumiko Takahashi, la mangaka la plus lue au monde ?

・世界で一番読まれている漫画家、高橋留美子とはだれか。

la mangaka la plus lue の lue は動詞 lire(読む)の過去分詞(読まれた・読まれている)。

la plus lue は比較の最上級。「一番読まれている」。直前の名詞 la mangaka を修飾しているので lu は女性形になっています(lue)。


02) Connaissez-vous Rumiko Takahashi ?

・高橋留美子を知ってますか。

もちろん高橋留美子は漫画家の高橋留美子さんのことです。


03a) Si son nom ne vous dit rien,

・もし彼女の名前に覚えがなくても

直訳すると「もし彼女の名前があなたに何も言わなくても」。

ですが、ここでの dire は「思い出させる」「覚えがある」といった意味になります。

たとえば、

    Cela ne me dit rien.

は、「それを聞いても何も思い出さない」「それには覚えがない」という感じです。


03b) vous vous souvenez certainement 
あなたはきっと覚えている

se souvenir de ... で「~を覚えている・思い出す」(再帰動詞)。

souvenir の活用は venir と同じなので、直説法現在形は、

   je me souviens (ジュ ム スヴィェン)
   tu te souviens (テュ トゥ スヴィェン)
   il se souvient (イル ス スヴィェン)

   nous nous souvenons (ヌ ヌ スヴノン)
   vous vous souvenez (ヴ ヴ スヴネ)
   ils se souviennent (イル ス スヴィェンヌ)

となります。(ils [3人称複数]のときに n が重なるのを注意。)

certainement は「確かに, きっと」。


03c) vous vous souvenez certainement de "Juliette je t’aime" ou "Ranma ½"… 

・あなたはきっと「めぞん一刻」や「らんま1/2」のことを覚えていることでしょう。

"Juliette je t’aime" ってなんだろう...、と思ってググったら「めぞん一刻」のことでした。

きっと、主人公の一人、大家さんの音無響子(おとなしきょうこ)さんの名前が「ジュリエット」になっているのでしょう。(推測です。)

"Ranma ½" (らんま1/2[にぶんのいち])はフランス語では Ranma Un Demi (ランマアンドゥミ)と読むようです。


◆ まとめ

Connaissez-vous Rumiko Takahashi ? Si son nom ne vous dit rien, vous vous souvenez certainement de "Juliette je t’aime" ou "Ranma ½"…  

高橋留美子を知ってますか。名前では何も思い出せなくても、きっと「めぞん一刻」や「らんま1/2」のことは覚えているはず...。


※ 私の学生時代の同級生が就職して、地元に帰って住んだアパートの名前が「めぞん一刻」で、大家さんは未亡人でした。 ほんとの話です...。


(ここまで)


anma Un Dem

2022-11-21

メロスは激怒した

Melos vit rouge. Il décida de tout faire pour éliminer ce roi cruel et malfaisant. 

短編小説の冒頭からです。


◆ おおまかな発音:

Melos vit rouge. 
メロス ヴィルージュ

Il décida de tout faire
イルデシダ ドゥトゥフェール

pour éliminer
プールエリミネ

ce roi cruel et malfaisant.
スロワクリュエル エ マルフザン


■ Melos vit rouge. 

この動詞 vit は vivire の直説法現在形3人称単数、 il vit の vit でしょうか?

それとも、voir の直説法単純過去の il vit の vit?

vivire だとすると、 vivre rouge で「赤く生きる」?

voir だと voir rouge、「赤く見る」?

辞書を見てみます。

rouge の項目に voir rouge という表現があります。

「かっとなる」。「目の前が赤くなる」ということらしい。

いっぽう、vivre rouge という表現は調べた範囲では辞書で見つかりませんでした。

そうすると、Melos vit rouge. は「メロスはかっとなった」です。

※ 英語の辞書を見ると、英語でも see red で「激怒する」という表現があるようです。


この vit が単純過去なのは、次の文の動詞が  Il décida ...と単純過去になっていることからもわかります。

単純過去は日常会話やニュースの文などには出てこないのでなかなか覚えづらいですね。

たしか昔読んだフランス語の教科書に「見てそれが単純過去だとわかればいい」みたいなことが書かれていたような...。


voir の単純過去の活用を確認しておきましょう。

je vis (ヴィ)
tu vis(ヴィ)
il vit(ヴィ)
nous vîmes(ヴィム)
vous vîtes (ヴィト)
ils virent (ヴィル)


活用語尾は、

je -is
tu -is
il -it
nous -îmes
vous -îtes
ils -irent

となります。


■ Il décida de tout faire pour éliminer ce roi cruel et malfaisant. 

○ Il décida 「彼は決めた・決心した」。 

décida は décider の単純過去形です。

活用は voir のときとちょっとちがいます。

je décidai (デシデ)
tu décidas (デシダ)
il décida (デシダ)
nous décidâmes (デシダーム)
vous décidâtes (デシダート)
ils décidèrent (デシデール)


活用語尾は、

je -ai
tu -as
il -a
nous -âmes
vous -âtes
ils -èrent

となります。

この活用語尾はいわゆる「第一群規則動詞」(不定詞[原形]の語尾が er の動詞の大半)の場合です。

単純過去の活用パターンについてくわしくは、「北鎌フランス語講座」などを見てください...。


○ Il décida de tout faire

「彼はあらゆることをすると決めた・決心した」

〈décider de 不定詞〉で「...すると決める・決心する」。


tout (すべて)が動詞 faire の後(右)ではなく前(左)にあるのはなぜでしょうか。

プチ・ロワイヤル仏和辞典の tout の項目の説明文に次のように出てました。

不定詞の目的語の時は不定詞の前に置かれる: Il veut tout comprendre. 彼はすべてを理解したがっている.

tout が不定詞(=動詞の原形、今回の場合は faire )の目的語になっているときは、その不定詞(原形動詞)の前(左)に置く、ということです。

なので、de faire tout ではなくて de tout faire となります。


○ Il décida de tout faire pour éliminer ce roi

「彼は、この王を排除するために、あらゆることをすると決めた・決心した」

éliminer は「除去する・排除する・取り除く」。

〈pour + 不定詞〉で「...するために」。

Il décida 彼は決めた de tout faire あらゆることをすると pour éliminer ce roi この王を排除するために


○ Il décida de tout faire pour éliminer ce roi cruel et malfaisant. 

ce roi の後に形容詞が2つ付いています。

cruel (クリユエル)「残酷な」。英語の cruel (クルーェル)と同じですね。

malfaisant は「有害な, 悪意のある」。mal「悪」を faisant (faireの現在分詞)「成す」という感じです。

「彼は、この残酷で有害な王を排除するために、あらゆることをすると決めた・決心した」


まとめると、

■ Melos vit rouge. Il décida de tout faire pour éliminer ce roi cruel et malfaisant. 

「メロスは怒った。この残忍で悪辣な王を排除するためにはなんでもやってやろうと決めた。」

この文は太宰治の『走れメロス』の冒頭、

「メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王を除かなければならぬと決意した。」

のフランス語訳です。

「邪智」は広辞苑によると「よこしまな知恵。わるぢえ。」とのことです。


原文は以下から引用させてもらいました。

Cours, Melos! - Nouvelles du Japon 


このブログで「単純過去」が出てくる記事


(以上)

2022-10-02

台湾はウクライナとはちがう

Une fois n’est pas coutume, la présidente taïwanaise et les dirigeants chinois sont d’accord sur un point : Taïwan n’est pas l’Ukraine. 


新聞「ル・モンド」の今年3月15日の記事 "Taïwan craint d’être l’Ukraine de la Chine" (台湾は中国のウクライナになることを恐れる) からです。

Le Monde, "Taïwan craint d’être l’Ukraine de la Chine"


◇ おおまかな発音

Une fois n’est pas coutume, 
ユヌフワ ネパ クチュム

la présidente taïwanaise et les dirigeants chinois 
ラプレズィダントタイワネーズ エ レディレジャンシノワ

sont d’accord sur un point : 
ソンダコール シュランプワン

Taïwan n’est pas l’Ukraine. 
タイワン ネパ リュクレヌ


◇ 文を読む

・ Une fois n'est pas coutume.

une fois 「一度」、coutume 「慣習、ならわし」(女性名詞)。

そのまま日本語にすると「一度は慣習ではない」、「一度だけでは慣習ではない」。

これは諺(ことわざ)で、辞書では「異例は慣例にあらず, 一度のことなら大目に見てよい」(クラウン仏和辞典)、「1度だけなら癖にはなるまい;今度だけは大目に見よう」(プチ・ロワイヤル仏和辞典)などとなっています。


・ la présidente taïwanaise et les dirigeants chinois

「台湾の(女性)総統と中国の指導者たち(は)」

台湾(中華民国)の大統領(総統)は Tsai Ing-wen (ツァイ・インウェン / 蔡英文)、女性です。


・ sont d’accord sur un point

être d'accord 「意見が一致している」。

→「或る一点について(は)意見が一致している」


・  : Taïwan n’est pas l’Ukraine. 

「すわわち、台湾はウクライナではない、ということだ。」

ドゥポワン(:)deux-points(コロン)は、「すわなち」「つまり」「言い換えれば」という感じになります。


◇ 試訳

Une fois n’est pas coutume, la présidente taïwanaise et les dirigeants chinois sont d’accord sur un point : Taïwan n’est pas l’Ukraine. 

今回は特例だ。台湾総統と中国指導者たちは、一つの点では意見が一致している。つまり、台湾はウクライナとはちがう、という点だ。


(ここまで)




2022-07-25

ONE PIECE に熱狂するフランス

C’est un phénomène qui va déferler le 8 décembre : la sortie du 100e tome de “One Piece” est attendue par des centaines de milliers de lecteurs en France, où il détrône presque le Gaulois Astérix. 

[ “One Piece”, une folie française. ( M Le magazine du Monde. 2021.12.04, No.533 )]

※ フランスの日刊紙 Le Monde が発行している週刊誌 " M Le magazine du Monde " の、昨年12月の記事のリード文から。

マンガ『ONE PIECE』第100巻のフランス語版の発売を待ち望むフランス人についての話です。

    → 関連記事:Le manga « One Piece », une passion française


【記事のタイトル】

記事のタイトルは、

“One Piece”, une folie française. 

ワンピース ユヌフォリフランセーズ

『ワンピース』、フランス(人)の熱狂
    ↓
『ワンピース』に熱狂するフランス

みたいな感じになっています。


【発音】

おおまかな発音です。

※ カタカナなのであくまで「おおまか」にです。

C’est un phénomène qui va déferler le 8 décembre : 
セタンフェノメーヌ キヴァデフェルレ ルユィット デサンブル

la sortie du 100e tome de “One Piece” est attendue 
ラソルティ デュサンティェームトム ドゥワンピース エタタンデュ

par des centaines de milliers de lecteurs en France, 
パル デサンテーヌ ドゥミリェ ドゥレクトゥール アンフランス

où il détrône presque le Gaulois Astérix. 
ウ イルデトゥローヌ プレスク ルゴロワアステリクス


【文の解説】

[01] C’est un phénomène ... : 

これ(それ)は...な現象だ


phénomène は「現象」、不定冠詞 un がついているので男性名詞ですね。

この Ce は、この文の終りにあるコロン( : )のあとに続く事態を指していると考えられます。


[02] C’est un phénomène qui va déferler le 8 décembre 

これは12月8日に沸き起ころうとしている現象だ。


qui は関係代名詞で、次の動詞 va (aller) の主語。

関係代名詞節 qui va déferler le 8 décembre が un phénomène を修飾。

déferler(動詞)は「波が砕け散る」こと。

ここでは「或る現象」が、「波が砕け散る」ように「沸き起ころう」としていることです。


[03] la sortie du 100e tome de “One Piece” est attendue 

『ONE PIECE』の第100巻の発売が待たれている


soritie は動詞 sortirの名詞。「外出」。ここではマンガが soitir することなので「発行」「発売」。 定冠詞 la がついているので女性名詞だとわかります。

tome は1巻、2巻の「巻」。ここでは le 100e tome なので「100巻目」。定冠詞が le なので tome は男性名詞。(tome が男性名詞なので定冠詞は le 。)

100e は centième 。

attendue は動詞 attendre の過去分詞の女性形。受動態になっています。主語の la soritie が女性名詞なので、語末に e がついてます。


[04] par des centaines de milliers de lecteurs en France

フランスで数十万の読者によって(→ 待たれている)


un centaine de ... で「およそ100くらいの...」、un millier de ... だと「およそ1000くらいの...」。

des centaines de milliers de ... はそれが組み合わさって複数になっています。1000の100倍なので、「およそ数十万くらいの...」。

lecteur は lire する人。読者。


[05] la sortie du 100e tome de “One Piece” est attendue par des centaines de milliers de lecteurs en France

ONE PIECE 100巻目の発売が、フランスの数十万の読者によって待たれている。

 

[06] où il détrône presque le Gaulois Astérix. 

そこ(フランス)では、それはほぼゴール人アステリクスの権威に取って代わる

où はここでは関係代名詞。この部分全体が、直前の名詞 France の説明になっています。

où は「そこでは」っていう感じで読むといいです。

détrôner は、trône(王座・王位)を dé(除去・剥奪)するので「廃位する」。そこから「権威を失わせる, とって代わる」。

gaulois は Gaule (ゴール, ガリア)の形容詞で、「ガリア, ゴールの」「ガリア, ゴール人の」。

Astérix(アステリクス)は、フランス(ヨーロッパ?)では知らない人はいない、バンドデシネ(マンガ)です。主人公の名前が Astérix です。

古代ローマ時代のゴール(ガリア: 現在のフランスを含む地域)で、ローマの侵略と戦うコミカルなヒーローです。

そのアステリクスの人気(王座・権威)に One Piece が取って代わる(détrôner)、ということです。


【訳例】

C’est un phénomène qui va déferler le 8 décembre : la sortie du 100e tome de “One Piece” est attendue par des centaines de milliers de lecteurs en France, où il détrône presque le Gaulois Astérix. 

12月8日に一つの現象が沸き起ころうとしている。フランスの数十万の読者によって、ONE PIECE 100巻目の発売が待たれているのだ。ゴール人アステリクスの権威が取って代わられようとしている。


(ここまで)


2022-05-05

ロンドンの街の安酒場、薄汚れた界隈の雑多な場所で

Dans un bouge de quartier de Londres, dans un lieu hétéroclite des plus sales, au sous-sol, Dirty était ivre. Elle l'était au dernier degré, j'étais près d'elle (ma main avait encore un pansement, suite d'une blessure de verre cassé). Ce jour-là, Dirty avait une robe du soir somptueuse (mais j'étais mal rasé, les cheveux en désordre). Elle étirait ses longues jambes, entrée dans une convulsion violente. Le bouge était plein d'hommes dont les yeux devenaient très sinistres. Ces yeux d'hommes troublés faisaient penser à des cigares éteints. Dirty étreignait ses cuisses nues à deux mains. Elle gémissait en mordant un rideau sale. Elle était aussi saoule qu'elle était belle : elle roulait des yeux ronds et furibonds en fixant la lumière du gaz.


フランスの20世紀の思想家・作家の Gerotes Bataille の小説 "Le Bleu du ciel"(空の青)の冒頭部分です。

一文ずつざっと見てみます。


01. Dans un bouge de quartier de Londres ロンドンの街の安酒場で, dans un lieu hétéroclite des plus sales 一番汚い場所のうちの雑多な一箇所で, au sous-sol 地下で, Dirty était ivre ダーティーは酔っていた. 

  • bouge : 汚く狭苦しい家, 安酒場
  • hétéroclite : 雑多な

→ ロンドンの街の安酒場、薄汚れた界隈の雑多な場所、その地下で、ダーティーは酔っていた。


02. Elle l'était au dernier degré 彼女はこの上なく酔っていた, j'étais près d'elle 私は彼女のそばにいた (ma main avait encore un pansement 私の片手にはまだ包帯があった, suite d'une blessure de verre cassé 割れたグラスによる傷の結果[としての] ). 

  • au dernier degré : この上なく
  • pansement : 包帯
  • suite : (女性名詞) 結果

→ 完全に酔っ払っていた。私は彼女のそばにいた(私の手にはまだ包帯が巻かれていた。割れたグラスで手を切ったのだ)。


03. Ce jour-là その日, Dirty avait une robe du soir somptueuse ダーティーは豪華なイブニングドレスを着ていた (mais j'étais mal rasé しかし私はちゃんと髭を剃ってなかった, les cheveux en désordre 髪はくしゃくしゃで). 

  • somptueux : 豪華な
  • raser : 髭を剃る

→ その日のダーティーは豪華なイブニングドレスをまとっていた(私のほうはちゃんと髭も剃らず、髪はぼさぼさだった)。


04. Elle étirait ses longues jambes 彼女は長い脚を伸ばしていた, entrée dans une convulsion violente 激しい麻痺状態に入って. 

  • étirer : (手足を)伸ばす
  • convulsion : 痙攣, 身悶え

→ 彼女は長い脚をピンと伸ばして、激しく身悶えし始めた。


05. Le bouge était plein d'hommes その安酒場は男たちでいっぱいだった dont les yeux devenaient très sinistres その男たちの目はとても陰険になっていた. 

  • sinistre : 不吉な, 陰鬱な, 陰険な

→ 酒場は男たちでいっぱいで、みなひどく陰鬱な目つきになっていた。


06. Ces yeux d'hommes troublés 男たちの濁った目は faisaient penser à des cigares éteints 火の消えた葉巻を思わせた . 

  • troublé : 濁った
  • éteint : 消えた [ éteindre(消す)の過去分詞 ]

→ 男たちの濁った目つきは火の消えた葉巻を思わせた。


07. Dirty étreignait ダーティーは抱きしめていたい ses cuisses nues 自分のむきだしのももを à deux mains 両手で . 

  • étreignait : étreindre(抱きしめる)の半過去形
  • cuisse : (女性名詞)腿(もも)。(女性の)尻。

→ ダーティーはむき出しになった自分の太ももに両手でしがみついていた。


08. Elle gémissait 彼女は呻いていた en mordant un rideau sale 汚いカーテンを噛みながら . 

  • gémir : 呻く(うめく)、嘆く(なげく) 

→ 汚らしいカーテンに噛みつき呻く。


09. Elle était aussi saoule qu'elle était belle 彼女は彼女が美しいのと同じくらい酔っていた : 

saoul : soûl と同じ。「酔った」。発音は「スー」。女性形 saoule は「スッル」 

→ 彼女の酩酊の度合いは、彼女の美しさに比例していた。


10. elle roulait des yeux ronds et furibonds 彼女は丸く怒りに満ちた両目を回していた en fixant la lumière du gaz ガスの明かりをじっと見つめながら . 

  • furibond :  怒り狂った, 怒気を含んだ → furieux
  • fixer : じっと見つめる

→ 怒りに満ちた丸い目をくるくるさせて、ガスの明かりにじっと目を凝らしている。


まとめて:

ロンドンの街の安酒場、薄汚れた界隈の雑多な場所、その地下で、ダーティーは酔っていた。完全に酔っ払っていた。私は彼女のそばにいた(私の手にはまだ包帯が巻かれていた。割れたグラスで手を切ったのだ)。その日のダーティーは豪華なイブニングドレスをまとっていた(私のほうはちゃんと髭も剃らず、髪はぼさぼさだった)。彼女は長い脚をピンと伸ばして、激しく身悶えし始めた。酒場は男たちでいっぱいで、みなひどく陰鬱な目つきになっていた。男たちの濁った目つきは火の消えた葉巻を思わせた。ダーティーはむき出しになった自分の太ももに両手でしがみついていた。汚らしいカーテンに噛みつき呻く。彼女の酩酊の度合いは、彼女の美しさと比例していた。怒りに満ちた丸い目をくるくるさせて、ガスの明かりにじっと目を凝らしている。 


(ここまで)


2022-05-04

地下鉄のザジ 冒頭

Doukipudonktan, se demanda Gabriel excédé. Pas possible, ils se nettoient jamais. Dans le journal, on dit qu’il y a pas onze pour cent des appartements à Paris qui ont des salles de bains, ça m’étonne pas, mais on peut se laver sans. Tous ceux-là qui m’entourent, ils doivent pas faire de grands efforts. D’un autre côté, c’est tout de même pas un choix parmi les plus crasseux de Paris. Y a pas de raison. C’est le hasard qui les a réunis. On peut pas supposer que les gens qu’attendent à la gare d’Austerlitz sentent plus mauvais que ceux qu’attendent à la gare de Lyon. Non vraiment, y a pas de raison. Tout de même quelle odeur.

(Raymond Queneau, "Zazie dans le métro", 1959)


20世紀の作家、レイモン・クノーの『地下鉄のザジ』(1959)の冒頭の段落です。

※ 最初の一文目の解説は、「いったいどこから臭ってくるんだ」(2022.4.25) にあります。

一文ずつ、試訳をあげておきます。

Doukipudonktan, se demanda Gabriel excédé.
いったいどこから臭ってくるんだ? ガブリエルはうんざりして言った。

Pas possible, ils se nettoient jamais.
冗談じゃない、体を洗ったりなんかしないんだな。

Dans le journal, on dit qu’il y a pas onze pour cent des appartements à Paris qui ont des salles de bains,
新聞で言ってた、パリで風呂のあるアパートは11パーセントもないって。

ça m’étonne pas, mais on peut se laver sans. 
だろうね。でもなくたって洗えるじゃないか。

Tous ceux-là qui m’entourent, ils doivent pas faire de grands efforts.
俺のまわりのこいつらみんな、たいした努力もしないってわけだ。

D’un autre côté, c’est tout de même pas un choix parmi les plus crasseux de Paris. まあだけど、パリで一番垢だらけの場所の中からここが選ばれたってわけじゃない。

Y a pas de raison.
理由なんかないんだ。

C’est le hasard qui les a réunis.
ここに集まってきたのは偶然なのさ。

On peut pas supposer que les gens qu’attendent à la gare d’Austerlitz sentent plus mauvais que ceux qu’attendent à la gare de Lyon. 
オーステルリッツ駅で待ってるやつらのほうがリヨン駅で待ってるやつらより臭い、なんてことは言えないんだ。

Non vraiment, y a pas de raison.
そうさ、理由なんかない。

Tout de même quelle odeur.
それにしたってなんて匂いだ。


まとめて:

いったいどこから臭ってくるんだ? ガブリエルはうんざりして言った。冗談じゃない、体を洗ったりなんかしないんだな。新聞で言ってた、パリで風呂のあるアパートは11パーセントもないって。だろうね。でもなくたって洗えるじゃないか。俺のまわりのこいつらみんな、たいした努力もしないってわけだ。まあだけど、パリで一番垢だらけの場所の中からここが選ばれたってわけじゃない。ここに集まってきたのは偶然なのさ。オーステルリッツ駅で待ってるやつらのほうがリヨン駅で待ってるやつらより臭い、なんてことは言えないんだ。そうさ、理由なんかない。それにしたってなんて匂いだ。
[レイモン・クノー『地下鉄のザジ』]


(以上)


2022-05-01

死ぬほどの苦しみだったので

Dans sa mortelle angoisse, tous les dangers lui eussent semblé préférables. 

[Stendhal, "Le Rouge et le Noir"]

19世紀の小説家スタンダールの『赤と黒』からです。

お金持ちの家の家庭教師になった、若くて利発で貧乏な主人公ジュリアンが、その家の奥さんを誘惑してやろうと手を握ろうとするけれど、なかなかその勇気がでずに苦しんでいる場面です。


【おおまかな発音】

Dans sa mortelle angoisse, 

ダンサモルテランゴワッス

tous les dangers lui eussent semblé préférables. 

トゥレダンジェ リュィイッスサンブレ プレフェラーブル


【語句】

mortelle : 形容詞 mortel の女性形。名詞 mort(死)の形容詞形。いみは「死すべき」「致命的な」「(死ぬほど)つらい」。

angoisse : 女性名詞。激しい不安や恐れ・苦悩。

sembler : 「~のように思われる・見える」。後ろに動詞の不定形(原形)

préférable : 形容詞。「より好ましい」。動詞形は préférer 「~をより好む」。


【文法】

eussent semblé の eussent は、動詞 avoir の接続法半過去形です。


avoir の接続法半過去形の活用は、

j' eusse [ジュス]
tu eusses [テュ ユス]
il eût [イリュ]
nous eussions [ヌズュシィオン]
vous eussiez [ヴズュシィエ]
ils eussent [イルズュス]

です。

覚えにくい...。


eussent semblé は〈avoirの接続法半過去 + 動詞の過去分詞〉なので「接続法大過去」です。

ここでの接続法大過去の用法ですが、いわゆる「条件法過去第2形」と言われる用法で、条件法過去形の代わりに使われます。

つまり、過去における仮定に対する帰結をあらわして「~だっただろう」という感じです。

この eussent semblé を条件法過去形で書けば、aurait  semblé となります。


【訳文】

Dans sa mortelle angoisse 彼の死ぬほどの苦悩の中では, tous les dangers あらゆる危険が lui eussent semblé 彼には思えただろう préférables より好ましく. 

→ 死ぬほどの苦悩の中では、あらゆる危険も彼には好ましく思えただろう。

⇒ 死ぬほどの苦しみだったので、他のどんな危険も彼にはましに思えただろう。


(以上)

2022-04-30

カトリック教会は極右に対する防波堤だった

Longtemps, l’Église catholique a semblé constituer un barrage à l’influence du Front national : plus les électeurs étaient pratiquants, moins ils votaient pour l’extrême droite. Ce n’est plus le cas. 

[Le Monde, Éditorial, 2022.04.21, "La discrétion de l’Église face à l’extrême droite"]


フランスの新聞 Le Monde の4月21日の社説(l'Éditorial)の冒頭です。

タイトルは、

La discrétion de l’Église face à l’extrême droite

極右を前にした教会の遠慮

となっています。


[発音]

Longtemps, l’Eglise catholique a semblé constituer un barrage 

ロンタン レグリーズカトリーク アサンブレ コンスティチュエ アンバラージュ

à l’influence du Front national : 

アランフリュアンス デュフロンナショナル

plus les électeurs étaient pratiquants,

プリュレゼレクトゥール エテ プラティカン 

moins ils votaient pour l’extrême droite. 

ムワン イルヴォテ プールレクストレームドロワット

Ce n’est plus le cas.

スネプリュルカ


[分かち訳]

Longtemps 長い間, 

l’Église catholique カトリック教会は 

a semblé ...に見えた 

constituer un barrage 障害となっている 

à l’influence du Front national 国民戦線の影響への 

: つまり、

plus les électeurs étaient pratiquants 有権者たちが宗義を守る人たちであればあるほど, 

moins ils votaient その人たちは投票することが少なかった 

pour l’extrême droite 極右へ. 

Ce n’est plus le cas もはやそういう場合ではない。


[語句]

Église catholique : カトリック教会。église は女性名詞。

constituer : ~を構成する, ~となる

barrage :[男性名詞] 通行止め、せき止めるための障害物

influence : [女性名詞] 影響

Front national : 国民戦線

: (deux points) : すなわち, つまり, というのも 

électeur : 選挙人, 有権者

pratiquant : 宗教の決まりを守る人。 catholique pratiquant で「日曜ごとに教会に行くカトリック教徒」。

voter : 投票する

extrême droite : 極右

Plus ..., moins ~. :  ...すればするほど、ますます~でなくなる。

cas :[男性名詞] 場合, 事態。 Ce n'est pas le cas. で「実際はそうではない」。


[訳文]

長いあいだカトリック教会は国民戦線の影響を防ぐものとなっているように見えた。つまり、日曜のミサにきちんと行く人有権者たちであればあるほど、極右に投票することがなかった。しかしもはやそうではない。


(以上)

2022-04-25

いったいどこから臭ってくるんだ

Doukipudonktan, se demanda Gabriel excédé.

(Raymond Queneau, "Zazie dans le métro", 1959)


20世紀の作家、レイモン・クノーの『地下鉄のザジ』(1959)の冒頭の一文です。


おおまかな発音:

Doukipudonktan, se demanda Gabriel excédé.

ドゥキピュドンクタン スドゥモンダ ガブリエル エクセデ


最初の長い単語(?)、doukipudonktan は辞書に載ってません(たぶん)。

doukipudonktan(ドゥキピュドンクタン)は、

D'où qu'il pue donc tant ?
ドゥキルピュドンクタン

という文を、口語で実際に発音したときの音を表しています。

ふつうに書くと、

D'où qu'il pue donc tant ?
ドゥキルピュドンクタン

ですが、その ル( il の l )の音が落ちて

Doukipudonktan ドゥキピュドンクタン

となっています。

ふつうはこんな書き方はしません。

この小説の作者(レイモン・クノー)はわざとこんな書き方をしたんでしょう(たぶんおもしろがって?)。


で、もとの文

D'où qu'il pue donc tant ?

の、

D'où は de + où。英語だと from where で「どこから」。


D'où qu'il pue ... の que は何かというと...。

この文全体は疑問文ですが、ふつうの疑問文の書き方だと、たとえば、

D'où esc-ce qu'il pue donc tant ?

というように est-ce que を入れたりします。

D'où qu'il pue donc tant ? の que はおもに口語で、この est-ce que の代わりとして使われるようです。

たとえば、手元にある仏和辞典には、

《話》 疑問詞+que 《=疑問詞+est-ce que, 倒置を避けるため》.

Pourquoi que tu demandes ça? どうしてそんなことを聞くんだ

とあります(クラウン仏和辞典より)。


donc はここでは

 《疑問・命令・驚きなどの強調》いったい,へえ,おい,まさか(プチ・ロワイヤル仏和辞典) 

にある、「いったい」っていうかんじでしょう。


pue は puer (悪臭を発する、臭い)という動詞。

il pue の主語の il は、意味を持たない、形式上の主語です。

たとえば辞書にはこんな例文が載っていました。

Ça pue dans cette salle. この部屋は臭い. (クラウン仏和辞典)

この Ça と同じかんじです。


tant は「そんなに」「とても」。


ここまでで Doukipudonktan ( D'où qu'il pue donc tant ) ? は、

いったいどこからこんなに臭ってるんだ?

となります。


次の、

se demanda Gabriel excédé

では、述語動詞の se demanda と、主語の Gabriel が倒置しています。

これは疑問の形ではないです。

「...とガブリエルは自問した」です。

demanda は、demander の単純過去です。

se demander は demander の代名動詞で「自問する」「いぶかる」です。


こういう場合、ふつうはその前の Doukipudonktan を、引用符で囲んで、

"Doukipudonktan", se demanda Gabriel excédé.

とします。


さいごの excédé は、動詞 excéder(超える)の過去分詞です。

excéder には「疲れさせる」「いらいらさせる」という意味もあります。がまんできる状態を〈超える〉っていうことから来ているのでしょう。

ですので、過去分詞 excédé は「疲れた」「いらいらした」となります。

Doukipudonktan, se demanda Gabriel excédé.

いったいどこからこんなに臭ってくるんだ、いらいらしたガブリエルは自問した。 

この excédé を形容詞的に Gabriel を修飾してるんじゃなくて、副詞っぽく動詞部分(se demanda)を修飾していると考えると、

いったいどこからこんなに臭ってくるんだ? と、ガブリエルはいらいらして言った。

ってかんじになります。 こっちのほうが自然ですね。


(以上)


2022-02-07

単純過去の終わり

Le passé simple serait-il un temps en voie de disparition ? 

フランスのニュース週刊誌「ル・ポワン(Le Point)」のWebサイトの、2017年(2017.12.17)の記事からです。

La fin du passé simple, c'est la perte d'une nuance de l'esprit

フランス語の動詞の活用のなかでも、普段あまり使わないので、なかなか覚えていられない「単純過去」が使われなくなりつつあることについての記事。


◆ 発音

おおまかな発音の確認です。

Le passé simple serait-il un temps en voie de disparition ?
ルパセサンプル スレティル アンタン アンヴォワドディスパリシォン


◆ 解釈

Le passé simple serait-il un temps en voie de disparition ?

この疑問文を平叙文にしてみると、

Le passé simple serait un temps en voie de disparition.

となります。

le passé simple はフランス語の時制の「単純過去」のこと。

serait は動詞 être の条件法現在形。

un temps の temps はここでは単純過去についてのことなので、「時、時間」ではなく、「時制」のこと。

en voie de の voie は「道」(女性名詞)。
en voie de ...で「…の途上に」「…しつつある」というかんじです。

disparition は「消滅」。動詞 disparaître (消滅する)の名詞形ですね。

※ - tion で終わっている名詞は〈女性名詞〉です。

以上で、Le passé simple serait un temps en voie de disparition. は、「単純過去は消滅しつつある時制なのだろう」となります。

このでの seraitの条件法は、断定を避ける用法です。


原文はこれの疑問文、

Le passé simple serait-il un temps en voie de disparition ?

なので、「単純過去は消滅しつつある時制なのだろうか」となります。


◇ この記事のタイトル、

La fin du passé simple, c'est la perte d'une nuance de l'esprit
ラファン デュパセサンプル セラペルト デュヌニュアンス ドゥレスプリ

のほうは、

単純の過去の終わり、それは精神のニュアンスが失われること

となります。

(以上)

2021-10-13

地下鉄の硬い切符が姿を消します

MÉTRO PARISIEN: LE TICKET CARTONNÉ VA COMMENCER À DISPARAÎTRE DES STATIONS EN OCTOBRE

フランスのニュース専門局 BFM TV のWebサイトの一つ ”BFM Paris” の記事(2021.9.31)より。

   → Métro parisien: le ticket cartonné va commencer à disparaître des stations en octobre 


パリのメトロの硬い切符ももうすぐSUICAのようなカードになっていくという記事です。


○ すべて大文字になっている記事のタイトルを小文字にすると、

Métro parisien: le ticket cartonné va commencer à disparaître des stations en octobre


◆ 発音は: 

Métro parisien: le ticket cartonné va commencer 
メトロ パリズィアン ルティケカルトネ ヴァコマンセ

à disparaître des stations en octobre
アディスパレートル デスタスィオン アンノクトーブル


◆ 単語

cartonné ですが、これは動詞 cartonner の過去分詞です。

名詞 carton(男性名詞)は「ボール紙」「厚紙」 で、動詞 cartonner は「厚紙で装丁する」「ハードカバーをつける」などとあります。

cartonné は過去分詞なので「厚紙で装丁した」「ハードカバーの」となります。が、ここでは le ticket cartonné で「厚紙の切符」ということでしょう。

パリの地下鉄の切符は結構な厚紙だった記憶があります(ン十年前)。

 va commencer は〈aller + inf. 〉なので「これから~する」という「近接未来」。

   ※ inf. は「不定詞」(動詞の原形)を表します。 不定詞を表す infinitif(アンフィニテイフ)の略です。

〈 commencer à + inf. 〉で「~し始める」。

disparaître は「なくなる」「姿を消す」。

des stations の station は「駅」。この des は?

不定冠詞複数形の des、なのか、それとも〈 前置詞 de + 定冠詞複数形 les 〉?

いみから考えて「地下鉄の駅から姿を消す」ということでしょうから、前置詞の de は「~から」といういみもあるので、ここの des は〈 前置詞 de + 定冠詞複数形 les 〉ですね。


◆ 文全体の意味

Métro parisien パリの地下鉄 : le ticket cartonné 厚紙の切符は va commencer à disparaître まもなく姿を消し始めるでしょう des stations 駅から en octobre 10月に

パリの地下鉄: あの硬い紙の切符は10月になると、地下鉄の駅から姿を消し始めます。


(ここまで)


2021-09-14

他者の実存は私たちの自由の条件(ジャン=リュック・ナンシー)

Il développe par exemple, dans **L’Expérience de la liberté** (Galilée, 1988), l’argument selon lequel notre liberté n’est pas un absolu que viendrait limiter l’existence d’autrui. C’est au contraire l’existence d’autrui, et notre « être-avec », qui serait la condition de toute liberté.

["La mort de Jean-Luc Nancy, philosophe de la fragilité de l’existence",  le 26 août 2021, lemonde.fr ] 


フランスの哲学者、ジャン=リュック・ナンシーが少し前に亡くなりました。

そのルモンドの追悼記事の抜粋からです。


◆ 分かち訳

Il développe 彼は(~を)展開している par exemple たとえば, dans **L’Expérience de la liberté** (Galilée, 1988) 『自由の経験』(ガリレー, 1988)において, l’argument 議論を(展開している) selon lequel それ(その議論)によれば notre liberté n’est pas un absolu 私たちの自由は或る絶対的なものではない que viendrait limiter l’existence d’autrui 他者の実存が制限しに来るだろうような(絶対的なもの). 

C’est au contraire 反対に l’existence d’autrui 他者の実存(と), et notre « être-avec » そして私たちの「ともに存在すること」なのである, qui serait la condition de toute liberté あらゆる自由の条件となるだろうものは.


・ selon lequel の lequel は関係代名詞で、先行詞は l'arugument。


・ un absolu que viendrait limiter l’existence d’autrui の que も関係代名詞。先行詞は un absolu。viendrait limiter の主語は l’existence d’autrui。「他者の実存が制限しに来るだろうような絶対的なもの」。

◆ 試訳

『自由の経験』(ガリレー, 1988)において、ジャン=リュック・ナンシーは、以下のような議論を展開している。私たちの自由は、他者の実存によって限界づけられてしまうような絶対的な何かなのではない。反対に、他者の実存や、私たちが「共に存在すること」こそが、あらゆる自由の条件となっているのだ、と。

[「実存の脆さ(もろさ)についての哲学者、ジャン=リュック・ナンシーの死」, ルモンド, 2021.8.26 ]


(ここまで)