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2022-11-21

メロスは激怒した

Melos vit rouge. Il décida de tout faire pour éliminer ce roi cruel et malfaisant. 

短編小説の冒頭からです。


◆ おおまかな発音:

Melos vit rouge. 
メロス ヴィルージュ

Il décida de tout faire
イルデシダ ドゥトゥフェール

pour éliminer
プールエリミネ

ce roi cruel et malfaisant.
スロワクリュエル エ マルフザン


■ Melos vit rouge. 

この動詞 vit は vivire の直説法現在形3人称単数、 il vit の vit でしょうか?

それとも、voir の直説法単純過去の il vit の vit?

vivire だとすると、 vivre rouge で「赤く生きる」?

voir だと voir rouge、「赤く見る」?

辞書を見てみます。

rouge の項目に voir rouge という表現があります。

「かっとなる」。「目の前が赤くなる」ということらしい。

いっぽう、vivre rouge という表現は調べた範囲では辞書で見つかりませんでした。

そうすると、Melos vit rouge. は「メロスはかっとなった」です。

※ 英語の辞書を見ると、英語でも see red で「激怒する」という表現があるようです。


この vit が単純過去なのは、次の文の動詞が  Il décida ...と単純過去になっていることからもわかります。

単純過去は日常会話やニュースの文などには出てこないのでなかなか覚えづらいですね。

たしか昔読んだフランス語の教科書に「見てそれが単純過去だとわかればいい」みたいなことが書かれていたような...。


voir の単純過去の活用を確認しておきましょう。

je vis (ヴィ)
tu vis(ヴィ)
il vit(ヴィ)
nous vîmes(ヴィム)
vous vîtes (ヴィト)
ils virent (ヴィル)


活用語尾は、

je -is
tu -is
il -it
nous -îmes
vous -îtes
ils -irent

となります。


■ Il décida de tout faire pour éliminer ce roi cruel et malfaisant. 

○ Il décida 「彼は決めた・決心した」。 

décida は décider の単純過去形です。

活用は voir のときとちょっとちがいます。

je décidai (デシデ)
tu décidas (デシダ)
il décida (デシダ)
nous décidâmes (デシダーム)
vous décidâtes (デシダート)
ils décidèrent (デシデール)


活用語尾は、

je -ai
tu -as
il -a
nous -âmes
vous -âtes
ils -èrent

となります。

この活用語尾はいわゆる「第一群規則動詞」(不定詞[原形]の語尾が er の動詞の大半)の場合です。

単純過去の活用パターンについてくわしくは、「北鎌フランス語講座」などを見てください...。


○ Il décida de tout faire

「彼はあらゆることをすると決めた・決心した」

〈décider de 不定詞〉で「...すると決める・決心する」。


tout (すべて)が動詞 faire の後(右)ではなく前(左)にあるのはなぜでしょうか。

プチ・ロワイヤル仏和辞典の tout の項目の説明文に次のように出てました。

不定詞の目的語の時は不定詞の前に置かれる: Il veut tout comprendre. 彼はすべてを理解したがっている.

tout が不定詞(=動詞の原形、今回の場合は faire )の目的語になっているときは、その不定詞(原形動詞)の前(左)に置く、ということです。

なので、de faire tout ではなくて de tout faire となります。


○ Il décida de tout faire pour éliminer ce roi

「彼は、この王を排除するために、あらゆることをすると決めた・決心した」

éliminer は「除去する・排除する・取り除く」。

〈pour + 不定詞〉で「...するために」。

Il décida 彼は決めた de tout faire あらゆることをすると pour éliminer ce roi この王を排除するために


○ Il décida de tout faire pour éliminer ce roi cruel et malfaisant. 

ce roi の後に形容詞が2つ付いています。

cruel (クリユエル)「残酷な」。英語の cruel (クルーェル)と同じですね。

malfaisant は「有害な, 悪意のある」。mal「悪」を faisant (faireの現在分詞)「成す」という感じです。

「彼は、この残酷で有害な王を排除するために、あらゆることをすると決めた・決心した」


まとめると、

■ Melos vit rouge. Il décida de tout faire pour éliminer ce roi cruel et malfaisant. 

「メロスは怒った。この残忍で悪辣な王を排除するためにはなんでもやってやろうと決めた。」

この文は太宰治の『走れメロス』の冒頭、

「メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王を除かなければならぬと決意した。」

のフランス語訳です。

「邪智」は広辞苑によると「よこしまな知恵。わるぢえ。」とのことです。


原文は以下から引用させてもらいました。

Cours, Melos! - Nouvelles du Japon 


このブログで「単純過去」が出てくる記事


(以上)

2022-02-07

単純過去の終わり

Le passé simple serait-il un temps en voie de disparition ? 

フランスのニュース週刊誌「ル・ポワン(Le Point)」のWebサイトの、2017年(2017.12.17)の記事からです。

La fin du passé simple, c'est la perte d'une nuance de l'esprit

フランス語の動詞の活用のなかでも、普段あまり使わないので、なかなか覚えていられない「単純過去」が使われなくなりつつあることについての記事。


◆ 発音

おおまかな発音の確認です。

Le passé simple serait-il un temps en voie de disparition ?
ルパセサンプル スレティル アンタン アンヴォワドディスパリシォン


◆ 解釈

Le passé simple serait-il un temps en voie de disparition ?

この疑問文を平叙文にしてみると、

Le passé simple serait un temps en voie de disparition.

となります。

le passé simple はフランス語の時制の「単純過去」のこと。

serait は動詞 être の条件法現在形。

un temps の temps はここでは単純過去についてのことなので、「時、時間」ではなく、「時制」のこと。

en voie de の voie は「道」(女性名詞)。
en voie de ...で「…の途上に」「…しつつある」というかんじです。

disparition は「消滅」。動詞 disparaître (消滅する)の名詞形ですね。

※ - tion で終わっている名詞は〈女性名詞〉です。

以上で、Le passé simple serait un temps en voie de disparition. は、「単純過去は消滅しつつある時制なのだろう」となります。

このでの seraitの条件法は、断定を避ける用法です。


原文はこれの疑問文、

Le passé simple serait-il un temps en voie de disparition ?

なので、「単純過去は消滅しつつある時制なのだろうか」となります。


◇ この記事のタイトル、

La fin du passé simple, c'est la perte d'une nuance de l'esprit
ラファン デュパセサンプル セラペルト デュヌニュアンス ドゥレスプリ

のほうは、

単純の過去の終わり、それは精神のニュアンスが失われること

となります。

(以上)

2015-03-28

クラクションが軋んだ音を立てた

Quatre ou cinq klaxons grincèrent à la fois.

この文は、André Malraux, "La Condition humaine" (アンドレ・マルロー『人間の条件』 ) の 1ページ目に出てきます。

    → このブログでマルローの『人間の条件』 を扱った記事

André Malraux, "La Condition humaine"
→ André Malraux, "La Condition humaine" (amazon)


まず発音を確認。

    Quatre ou cinq klaxons
    カトゥル ウ サンク クラクソン

    grincèrent à la fois
    グランセール ア ラ フワ


文の最初が Quatre ou cinq、つまり、

    4つか5つ(の)

で始まっていて、そのすぐ右隣りには、

    kalaxons

とあるので

    4つか5つのクラクソン (が)

ということになりそうです。

kalaxon は男性名詞で、

    警笛、クラクション

のことです。

    ※ もともとは kalaxon はクラクションを製造していた会社(フランス)の会社名だということです。

さて 「4つか5つ(の)クラクション」 がどうしたのか。

次に grincèrent という動詞が来ます。

動詞の活用の最後が -èrent となっているパターンはこれまでも何度か出てきています。

そうです、直説法単純過去形です。

    → 直説法単純過去形についての記事

grincèrent の不定詞は grincer (グランセ)で、意味は、

    軋む(軋む)、耳障り(みみざわり)な音を立てる

です。

grincer の単純過去形の活用を確認しておきましょう。

    je grinçai ジュ グランセ
    tu grinças テュ グランサ
    il grinça イル グランサ
    nous grinçâmes ヌ グランサーム
    vous grinçâtes ヴ グランサート
    ils grincèrent イル グランセール

ちょっと面倒ですね。


活用の語尾だけ取り出すと、

je -ai
tu -as
il -a
nous -âmes
vous -âtes
ils -èrent

となるわけですが、単純過去の活用語尾の型は 4種類ほどあります。

grincer と同じパータンになるのは、不定詞(原形)が -er で終わっている動詞です(aller も含む)。

たとえば、parler だと、
    je parlai ジュ パルレ
    tu parlas テュ パルラ
    il parla イル パルラ
    nous parlâmes ヌ パルラーム
    vous parlâtes ヴ パルラート
    ils parlèrent イル パルレール

となります。

    ※ ほかの 3種類の活用のパターンについてはまたいつか...。

また、grincer の場合、主語が ils (3人称複数) 以外のときに、 c が ç (c cédille) になっているのは、c を [ k ] (カ行)ではなく、[ s ] (サ行) と読ませるためです。

( これは直説法現在の活用のときと同様です。 詳しくはやはり別の機会に...。 待てない人はググッて調べてみてください。)

さて、
    Quatre ou cinq klaxons grincèrent

までで、

    4つか5つのクラクションが軋んだ
        ↓
    クラクションが4、5回、軋んだ音を立てた

ということになります。

最後に、
    à la fois

とありますが、fois は女性名詞で、

    ~回、~度

という回数を表しますが、à la fois は熟語で、

    同時に、一度に

という意味でした。

ですので、

    Quatre ou cinq klaxons grincèrent à la fois.

で、

    4つか5つのクラクションが一度に軋んだ音を立てた。
        ↓
    4、5台の車のクラクションが一斉に軋んだ音を立てた。

という感じになります。


この文は、小説冒頭で、Tchen という人物が夜、蚊帳が吊られたベッドに寝ている人物を刺し殺そうとして躊躇している場面に挿入されています。

この小説の書き出しについては、やはり、

    → このブログでマルローの『人間の条件』 を扱った記事

を見てください。





2015-02-01

彼が私たちのところにやって来たのは 01

Il arriva chez nous un dimanche de novembre 189...

( Alain-Fournier, "Le grand Meaulnes" )


Le grand Meaulnes 表紙
Le grand Meaulnes 表紙 (Wikipediaより


アラン=フルニエ (1886‐1914) というフランスの小説家の作品 Le grand Meaulnes(1913)の冒頭の文です。

Meaulnes は「モーヌ」と読みます。

日本語では 『モーヌの大将』 というタイトルで翻訳が出ています。


では、おおまかな発音を確認しましょう。

    Il arriva chez nous

    イラリヴァ シェヌゥ

    un dimanche

    アン ディモンシュ

    de novembre 189...

    ドゥ ノヴァンブル ミルユィサン カトルヴァンディ...


最初の

  Il arriva

の arriva は動詞 arriver が活用したものですが、時制は何でしょうか?

 ...。


そうです、直説法単純過去形です。


ちょっと活用を確認しておきましょう。

    j'arrivai
    tu arrivas
    il arriva

    nous arrivâmes
    vous arrivâtes
    ils arrivèrent


発音は、

    ジャリヴェ
    テュ アリヴァ
    イラリヴァ

    ヌザリヴァーム
    ヴザリヴァート
    イルザリヴェール


Il arriva の意味は、

    彼は来た

という感じですが、この「彼」が誰なのかは ― この文は小説冒頭なので ― まだわかりません。


続いて、

    Il arriva chez nous

chez は「~の家で/に」なので、

    彼は私たちの家にやってきた

となります。

※ 私が昔よく通っていた喫茶店が「シェヌー」という名前でした。


次に、un dimanche と続きます。

    Il arriva chez nous un dimanche

dimanche は「日曜日」なので、un dimanche で「或る日曜日に」という感じでしょう。

    彼は或る日曜日に私たちの家にやってきた。


さらに、月の名前が付いています。

    Il arriva chez nous un dimanche de novembre

novembre は「11月」。

    彼は11月の或る日曜日に私たちの家にやってきた。


そして最後に西暦が続きます。

    Il arriva chez nous un dimanche de novembre 189...

    彼は189x年の11月の或る日曜日に私たちの家にやってきた。

    彼が私たちのところにやって来たのは、189x年11月の或る日曜のことだった。


◆ 翻訳

天沢退二郎 訳 『グラン・モーヌ (岩波文庫) 







2014-09-12

二人の目が出会った (2)

Elle lui dit :  -- " Je vous remercie, monsieur. "


「二人の目が出会った」の 2回目です。

  

  ※ 小説の引用箇所の直前の情景を描いたイラスト
     (出典: The Project Gutenberg, "Sentimental Education"


Frédéric fit un bond et le rattrapa. Elle lui dit :

-- " Je vous remercie, monsieur. "

Leurs yeux se rencontrèrent.

[ Flaubert , "L'Education Sentimentale" ]


風で吹き飛んだ帽子を捕まえてくれたフレデリックにその婦人はどう対応したでしょうか。


その婦人はフレデリックに語りかけます。

Elle lui dit :

エル リュイ ディ


彼女は彼に言った。


lui は「彼に」とも「彼女に」ともなりますが、ここでは帽子を捕まえてくれたフレデリックに、その婦人が何か言ったのです。

そうすると dit は現在形ではないはずです。

dire の直説法現在形は、

je dis ジュ
tu dis
il dit
nous disons
vous dites
ils disent

なので、

Elle lui dit :

は、

彼女は彼に言う

と現在形にとることもできますが、

でもその前からの流れでいけば単純過去形ではないでしょうか。

dire の直説法単純過去形の活用は、

je dis ジュ ディ
tu dis テュ ディ
il dit イル ディ
nous dîmes ヌ ディーム
vous dîtes ヴ デイット
ils dirent イル ディール

なので、一人称(je, tu, il)の活用は直説法現在形も単純過去形も同じです。


さて、その人妻はフレデリックに何と言ったのか。

Je vous remercie, monsieur.

ジュ ヴ ルメルシ ムシュー

「ありがとうございます。」

と、感謝の言葉をかけました。

remercier (ルメルシィエ)は、「〜に感謝する、~にお礼を言う」 といういみです。


ここまでで、

Frédéric fit un bond et le rattrapa. Elle lui dit :
-- " Je vous remercie, monsieur. "

フレデリックは飛び上がって、帽子を捕まえた。
彼女は 「ありがとうございます」 と言った。

という感じになります。


(続く)


■ 翻訳

翻訳は文庫で手に入るものだけでも数種ありますが、ここでは岩波文庫版を紹介します。


感情教育〈上〉 (岩波文庫)




感情教育〈下〉 (岩波文庫)



2014-09-09

二人の目が出会った (1)

フランス語中級です。

今日から数回に分けて、19世紀の小説家 フロベールの 『感情教育』 という作品からの例文、

    Frédéric fit un bond et le rattrapa.
    Elle lui dit : -- " Je vous remercie, monsieur. "
    Leurs yeux se rencontrèrent.

    [ Flaubert , "L'Education Sentimentale" ]

を見ていきましょう。

  

  ※ 小説の引用箇所の直前の情景を描いたイラスト
     (出典: The Project Gutenberg, "Sentimental Education"


まず、最初の文の発音をおおまかに確認します。

    Frédéric fit un bond

    フレデリック フィ アン ボン

    et le rattrapa

    エ ル ラトラパ


この文には動詞が二つあります。

fit と rattrapa です。

fit の不定詞は faire、 rattrapa の不定詞は rattraper です。

それぞれ時制は直説法単純過去形です。

単純過去形は話し言葉では使われず書き言葉で使われる時制です。

そして活用がちょっと面倒です。

とりあえず、faire は三人称単数で、

    il fit

となり、rattraper は 三人称単数で

    il rattrapa

となります。


文章に戻って、

    Frédéric fit un bond

の bond は、

    跳躍、ジャンプ (男性名詞)

です。


なので、

    Frédéric fit un bond

は、

    フレデリックはジャンプした

です。

そして、

    Frédéric fit un bond et le rattrapa.

で、rattraper は「つかむ、キャッチする」という意味なので、

    フレデリックはジャンプしてそれをつかんだ

となります。


「それ le」 とは何かというと、

    フレデリックは学生で、いま客船で川をさかのぼって帰省の途中
    船の甲板で楽団の演奏を聞いている人妻に一目惚れ
    風でその人妻の帽子が吹き飛ばされます
    フレデリックはすかさずジャンプしてその帽子を捕まえます

私の記憶によれば、おおよそ以上のような場面でした。

上に掲載したイラストは、その帽子が飛ぶ直前、人妻とその夫がなにか話をしている場面です。


吹き飛ばされた 「帽子」 は、

    le chapeau

で男性名詞なので、 「それ le」となります。


□ 単純過去形の活用例

_ faire

    je fis ジュ フィ
    tu fis テュ フィ
    il fit イル フィ
    nous fîmes ヌ フィーム
    vous fîtes ヴ フィット
    ils firent イル フィール

_ rattraper

    je rattrapai ジュ ラトラペ
    tu rattrapas テュ ラトラパ
    il rattrapa イル ラトラパ
    nous rattrapâmes ヌ ラトラパーム
    vous rattrapâtes ヴ ラトラパート
    ils rattrapèrent イル ラトラペール


聞くところによるとフランス人でも単純過去形の活用を正確に書けない人は多いようなので、私たちも正確に書けなくても大丈夫!?

でも、文中に出てきたらそれが 「おっ、単純過去形!」 とわかるようにしておく程度でよい、と聞いたことがあります。


が、きちんとフランス語を学びたい人はきちんと覚えましょう!


2013-02-14

そこで私は本を書くことに

[フランス語初級]

Je me décidai alors à écrire un livre.

(Léon Trotsky, "Ma Vie")

トロツキーの自伝、『わが生涯』のフランス語訳より。

トロツキーは今から 100年前に起きたロシア革命の中心人物の一人です。

トロツキー 18才
トロツキー 18才 (Wikipedia)


○ 発音

Je me décidai
ジュムデシデ
alors
アロール
à écrire
ア エクリール
un livre.
アン リーヴル


○ 語句

décidai : 動詞 décider の単純過去形
décider : 決める
se décider :  決心する
se décider à 不定詞 :  〜する決心をする
alors :  それで(そこで)


○  直訳

Je me décidai alors à écrire un livre.

そこで alors 私は je 本を書くことを à écrire un livre 決心した me décidai 。


○ 分かち訳

Je (私は) me décidai (決心した) alors (そこで) à écrire un livre (本を書くことを) .


○ 単純過去形

単純過去形は、過去の事実や出来事を淡々と・客観的に述べるさいに使われる時制です。

* 単純過去形は話し言葉では使われません。

se décider の場合、以下のように活用します。

je me décidai
tu te décidas
il se décida
nous nous décidâmes (デシダーム)
vous vous décidâtes (デシダート)
ils se décidèrent (デシデール)


この活用パターンは、不定詞の語尾が -er で終わる動詞に共通です。

たとえば donner だと、

je donnai
tu donnas
il donna
nous donnâmes
vous donnâtes
ils donnèrent

となりますね。

活用語尾を取り出すと、

je -ai
tu -as
il -a
nous -âmes
vous -âtes
ils -èrent

です。

-er 以外の動詞はまたちょっと違った形で活用します!


○ 試訳

Je me décidai alors à écrire un livre.

そこで私は本を書くことにした。

○ リンク

フランス語訳
翻訳 (岩波文庫)


2012-04-15

彼女は立ち上がって、コーヒーが残っているかを


(フランス語中級)

Elle se leva pour aller voir s'il restait du café.

[ Zola, "L'Assommoir" ]

エミール・ゾラの 『居酒屋』 の一節(第7章)。


【発音】

Elle se leva
エル ス ルヴァ

pour aller voir .
プール アレ ヴォワール

s'il restait du café
シィル レステ デュ カフェ


今回はフランス語の音声をつけてみました...。
ネイティブの発音ではありませんよ...。

音声  [ SoundCloud ]


【語句】

_ leva : lever の直説法単純過去

_ se lever : 「起き上がる、立ち上がる」

_ aller voir : 「見に行く」

_ si : ここでは「~かどうか」

_ restait : rester (「留まる、~の状態でいる」) の直説法半過去形

_ il reste ~ : 「~が残っている」 。 この場合、il はいわゆる「非人称」の主語。

_ du café : ここでは du は部分冠詞。


【説明】

●単純過去形

Elle se leva で、「彼女は立ち上がった、彼女は起き上がった」ですが、「“立ち” 上がった」のか「“起き” 上がった」 のかどちらがいいかは状況(文脈)によります。

ここでは、「彼女」が椅子かなんかに座っていて、そこから「立ち上がった」ことにします。

leva の時制は単純過去形です。

引用文はエミール・ゾラの『居酒屋』という小説からですが、小説などでは 「だれだれは~した、それから~して、~した」みたいに、順番に何かが起こったり、だれかが何かを次々にしたりする様子が描かれます。

そういう場合に単純過去形が使われることが多いです。日常会話では単純過去形は使われません。

日本語でいえば「単純過去」はちょっと「古文」みたいな感じがするのかもしれません。


●pourの意味

つぎに Elle se leva pour aller voir ですが、前置詞 pour は「目的」を表すので、pour aller voir で 「見に行くために」となり、「彼女は~を見に行くために立ち上がった」 となります。

ですが、pour には「結果」の意味もあるので、「彼女は立ち上がって~を見に行った」でもいいですね。

どちらにするかはやはり状況(文脈)の自然さで選びましょう。


●siの意味

s'il restait du café で 「コーヒーが残っているかどうか(を)」。

ここでの si は 「~かどうか」です。また、il は 「非人称」になります。


●半過去形

rester が単純過去ではなくて、半過去形になっているのは、「コーヒーが残っている」というのは順番に起こったりしたりするような動きではなく、そのときの「状態」「状況」だからです。

そうした過去の「状況」「状態」「背景」を表す時制は、単純過去ではなく、複合過去でもなく、半過去になります。


【訳】

Elle se leva pour aller voir s'il restait du café.
彼女は立ち上がって、コーヒーが残っているか見に行った。


【補足】

* lever の直説法単純過去の活用

je levai
ジュ ルヴェ
tu levas
テュ ルヴァ
il leva
イル ルヴァ
nous levâmes
ヌ ルヴァーム
vous levâtes
ヴ ルヴァートゥ
ils levèrent
イル ルヴェール


【関連記事】


原文
* このページ内を検索すると該当する文章が見つかります。



2009-12-24

下唇を上唇より前に伸ばして、彼女はちょっと不満な顔をした。

Allongeant sa lèvre inférieure au delà de la lèvre supérieure, elle fit une petite moue.

(Hugo, "Notre Dame de Paris", 1832)

[フランス語中級]

ヴィクトル・ユゴー (Vitor Hugo) の 『パリのノートルダム』 より。




ユゴー直筆の草稿1ページ目(Wikipediaより)


【発音】
Allongeant sa lèvre inférieure
アロンジョン サ レーヴル アンフェリウール

au delà de la lèvre supérieure,
オドゥラ ドゥ ラ レーヴル シュペリウール

elle fit une petite moue.
エル フィ ユヌ プティット ム

【語句】
allongeant : [アロンジョン] 動詞 allonger の現在分詞。"allongant" という綴りにははならない。"allongant" という綴りだと [アロンガン] という発音になってしまう。

allonger : [アロンジェ](動詞) …を伸ばす
lèvre : [レーヴル]
inférieure : [アンフェリウール] 下の, 低い
delà : [ドゥラ] m. 向こう, あちら
au delà de : [オドゥラドゥ] …を超えて, の向こうに
supérieure : [シュペリウール] 上の, 上部の
fit : [フィ] faire の直説法単純過去、三人称単数形。
moue : [ム] f. 仏頂面, 口をとがらすこと

【直訳】
Allongeant sa lèvre inférieure
彼女の(自分の)下唇を伸ばして

au delà de la lèvre supérieure,
上唇より向こうに(上唇を超えたところに)

elle fit une petite moue.
彼女は小さな仏頂面をした。

【試訳】
下唇を上唇より前に伸ばして、彼女はちょっと不満な顔をした。
下唇を突き出して、彼女はちょっとふくれ面をした。

【翻訳】
『ノートル=ダム・ド・パリ (ヴィクトル・ユゴー文学館)』(潮出版社, 5670円)