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2014-07-27

上級仏単語: palmarès

今日の上級フランス単語は

    palmarès

です。

palmarès 受賞者名簿

発音は、

    パルマレス

と、最後の -s も発音します。

    → Forvo で palmarès の発音を確認


品詞は、名詞(男性名詞)。

意味は、

    受賞者名簿

です。


関連する語句に

    palme
    パルム

があります。

palme は女性名詞で、

    棕櫚(しゅろ)

です。

また、

    (勝利や栄誉の象徴としての)棕櫚の枝や葉

という意味があります。

カンヌ国際映画祭の最高賞は、

    Palme d'Or
    パルム ドール

で、or は「金(きん)、黄金」 (男性名詞)なので、訳すと

    黄金の棕櫚

となります。

2014-07-21

上級仏単語: plébiscite

今日の単語は、

    plébiscite

発音は、

    プレビシットゥ

で、男性名詞。

plébiscite 国民投票


いみは、

    国民投票、住民投票

です。


もともとは、古代ローマの平民会議の決議のことで、

プレブス (plebs) が 「平民」 という意味だそうです。


チャンは...だろうか? その5

Tchen tenterait-il de lever la moustiquaire ? Frapperait-il au travers ? L’angoisse lui tordait l’estomac.
André Malraux, "La Condition humaine" (アンドレ・マルロー『人間の条件』 ) 冒頭の文章、第5回目。

André Malraux, "La Condition humaine"
→ André Malraux, "La Condition humaine" (amazon)

    → 4回目

いちおうここまでの訳文は、

チャンは蚊帳をめくり上げようとするのだろうか? 貫いて突くのだろうか?激しい不安で彼の胃がきりきりと痛んだ。

となりました。

残った問題は、
L’angoisse lui tordait l’estomac.

の、lui (彼に)でした。


もう一度直訳してみると、

強い不安が 彼に 胃を きりきり痛ませた。

となりますが、この 「彼に」 はなんなのか。

強い不安が彼の胃をきりきり痛ませた。

なら、

L’angoisse tordait son estomac.

というように、son estomac とならないのか。

同じような例として、たとえばクラウン仏和辞典に以下のような例文と訳文があります。

Je lui ai serré la main.

ジュ リュィ エ セレ ラ マン

私は彼(女)の手を握った.

※ serrer は「握る」です。

日本語訳では「彼の(あるいは彼女の)手を握った」となりますが、仏文では、

J'ai serré sa main.

とはなっていません。


これらの文に共通しているのは、身体(からだ)の一部(胃とか腹とか手とか)をどうこうした、という意味の文だということ。

そして、「彼の(彼女の)何なに」や「私の何なに」を表すのに、son(sa)や mon(ma)ではなく、lui や me が使われ、対象となる名詞(estomac や ventre や main)には定冠詞 (le や la)が付いている、ということです。

lui や me は文法用語で「人称代名詞」といいます。

つまり、身体の一部が動詞の目的語になる時、その身体の所有者を人称代名詞で示している、ということです。

フランス語文法の参考書をみてみましょう。

目黒士門 『現代フランス広文典』 (白水社, 2000) の 159ページ、「補語人称代名詞」 の 「間接補語」の箇所 に以下のようにあります。

「また、身体部分を表す名詞とともに用いられ、所有者を示す。」

その例文として

Il m'a serré la main.

彼は私の手を握った。

という文などが出ています。

この用法で使われる人称代名詞は 「間接補語」 の形になります。

人称代名詞には、「間接補語」 のほかに 「直接補語」 という形などがありました。

一人称や二人称 (私やあなた) のときは、「間接補語」 も 「直接補語」 も形が同じで、 me, te, nous, vous です。

が、三人称では、間接補語は lui, leur、直接補語は le/la, les でした。

※ 目黒士門 『現代フランス広文典』 (白水社) 3,888円






2014-07-13

上級仏単語: peloton

いまフランスでは、ツール・ド・フランス (Tour de France) の真っ最中です。

ツール・ド・フランスは一言でいえば、フランス縦断の自転車レースです。

J SPORTSのサイト 「ツール・ド・フランス2014 : サイクルロードレース」 で情報を得ることができます。

フランスではサッカーのワールドカップと同じかそれ以上の人気があります (たぶん...)。


そして、きょうのフランス語の上級単語は、

    peloton

    プロトン

です。


辞書を引くと、

    男性名詞

で、意味は、

    小さい糸玉(毛糸玉)

と出てます。


もうちょっと辞書を見ると、

    (スポーツで) 競争する小グループの一団

などともあります。


手元にある 『 ディコ仏和辞典』 (第2版)には、

    (マラソン・競馬・自転車競技の) 走者〔馬〕の一団、集団、グループ

となっていてわかりやすい。


つまり、ツール・ド・フランスを報じるフランス語の記事にもこの peloton はよく出てくるのです。


2014-07-12

チャンは...だろうか? その4

Tchen tenterait-il de lever la moustiquaire ? Frapperait-il au travers ? L’angoisse lui tordait l’estomac.

André Malraux, "La Condition humaine" (アンドレ・マルロー『人間の条件』 ) 冒頭の文章、第4回目。

3回目


最初の二つの文は、

    チャンは蚊帳をめくり上げようとするのだろうか? 貫いて突くのだろうか?

というように解釈しておきました。

今日は三つ目の文です。

    L’angoisse lui tordait l’estomac.

発音は、

   ラングワッス リュィ トルデ レストマ

です。


最後の単語 estomac は最後の -c を発音しないので「エストマック」ではなく、「エストマ」になります。

男性名詞で意味は「胃」。

英語の 「胃」の意味の stomach(スタマック)とちょっと似てるけどけっこう違いますね。

さて、

    L’angoisse lui tordait l’estomac.

を、不明な単語をそのままに、前から並べて訳すと、

    アングワッスは 彼に トルデしていた 胃を

となります。

lui は「彼に」と「彼女に」との両方の可能性がありますが、ここは「チャン」のことだと思われるので「彼に」としておきましょう。

日本語の語順っぽくすると、

    アングワッスは 彼に 胃を トルデしていた

という感じでしょうか。


アングワッス(angoisse)は女性名詞で、

    強い不安、苦悩、恐怖
という意味で、単なる「心配」とかじゃなくて、息詰まるような不安です。

とりあえず、

    強い苦悩は 彼に 胃を トルデしていた

となります。


tordait は半過去形です。

不定詞(原形、元の形)は、

    tordre(トルドゥル)

です。

直説法半過去形の活用語幹は、直説法現在形の nous と同じでした。

tordre を直説法現在形に活用させると、

    je tords (ジュ トール)
    tu tords (テュ トール)
    il tord (イル トール)
    nous tordons (ヌ トルドン)
    vous tordez (ヌ トルドン) ヴ トルデ)
    ils tordent (イル トルドゥ)

となるので、nous のときのかたち、

    tordons

から - ons を取った

    tord-

が tordre の半過去形の活用語幹です。


半過去形の活用語尾は、

    je -ais
    tu -ais
    il -ait
    nous -ions
    vous -iez
    ils -aient

でしたので、活用させてみると、

    je tordais
    tu tordais
    il tordait
    nous tordions
    vous tordiez
    ils tordaient

となります。


そして tordre の意味は、

    ねじる、よじる

なので、

    L’angoisse lui tordait l’estomac.

は、

    苦悩は 彼に 胃を ねじっていた(よじらせていた)

となります。

いま手元にある 『プチロワイヤル仏和辞典』 で tordre を調べたら、
    〔胸・腹など〕をきりきり痛ませる

という意味が載っていて、その例文に、

    L'angoisse me tordait le ventre.

    激しい不安で私の胃がきりきりと痛んだ。

と出ているではないですか!

これは、今やってる、

    L’angoisse lui tordait l’estomac.

とほとんど同じです。

違いは、

    lui → me

    l’estomac → le ventre

の二箇所です。

    ※ estomac は「胃」ですが、ventre(ヴォントゥル) は「お腹」です。

すると、

    L’angoisse lui tordait l’estomac.

のほうは、

    激しい不安で彼の胃がきりきりと痛んだ。

と訳せそうです。

訳はこれでいいで良いでしょう。

でも、lui (彼に)が気になります。

もう一度直訳してみると、

    強い不安が 彼に 胃を きりきり痛ませた。

となり、このままでは「彼の胃を」とはなりません。


どうなっているのでしょうか?

続きます...。
André Malraux, "La Condition humaine"
→ André Malraux, "La Condition humaine" (amazon)