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2013-01-12

この瘴気からずっと遠くへ

Envole-toi bien loin de ces miasmes morbides

[ フランス語初級 ]

ボードレールの詩集 『悪の華』 ( "Les Fleurs du Mal" )に入っている「上昇」 ( Elévation )という詩より。


[ 発音 ]

Les Fleurs du Mal
レ フルール デュ マル

élévation
エレヴァシォン

Envole-toi
オンヴォル トワ

bien loin
ビャン ロワン

de ces miasmes morbides
ドゥ セ ミアスム モルビィドゥ


[ 語句 ]

élévation : [女性名詞] 上昇

Envole-toi : s'envoler の tu に対する命令形

s'envoler : 飛び立つ, 飛び去る

loin : [副詞] 遠くへ(に), はるかに。 bien loin の bien は loin の強調。

loin de : …から遠くへ(に)

miasme : [男性名詞] (腐敗物から出る)ガス, 臭気; 瘴気()

morbide : 病的な, 不健全な


[ 訳 ]

Envole-toi  飛び立て

bien loin ずっと遠くへ

de ces miasmes morbides この病的な瘴気から

「飛び立て、病に満ちたこの瘴気からずっと遠くへ。」


[ 関連記事 ]

→ 「愚かさと過ちと罪と吝嗇が(1)」 (2012/2/29)
→ 「愚かさと過ちと罪と吝嗇が(2)」 (2012/3/04)


2012-03-04

愚かさと過ちと罪と吝嗇が(2)


[フランス語中級]

La sottise, l'erreur, le péché, la lésine,
Occupent nos esprits et travaillent nos corps,
Et nous alimentons nos aimables remords,
Comme les mendiants nourrissent leur vermine.
[Baudelaire, "Les Fleurs du mal", 1861]

ボードレールというフランスの詩人の『悪の華(はな)』という詩集の冒頭 Au lecteur の書き出し。 前回の続きです。

今回は後半の2行を見てみます。


【発音】

Et nous alimentons
エ ヌザリモントン

nos aimables remords,
ノゼマーブル レモール

Comme les mendiants nourrissent
コム レ モンディアン ヌリッス

leur vermine.
レール ヴェルミヌ


【語句】

alimenter (アリモンテ) : (動詞) に食べ物を与える、を養う
aimable : (形容詞) 愛想がいい、感じがいい
remords : (男性名詞) [単数形でも -s がつく] 悔恨、良心の呵責
comme : (接続詞) ~と(同じ)ように
mendiant : (名詞) 乞食。女性は mendiante (マンディアント)。
nourrir (ヌリール) : (動詞) に食べ物を与える、を養う
leur : (所有形容詞) 彼らの~、それらの~。 
vermine : (女性名詞) [ノミ・シラミなどの] 害虫。


【意味】

Et nous alimentons
そして私たちは養っている

nos aimables remords,
私たちの愛すべき悔恨を

Comme les mendiants nourrissent
乞食どもが栄養を与えているように

leur vermine.
彼らのノミ・シラミに。


【訳】

そしてわれらは自らの愛すべき悔恨たちを養っている、
ちょうど乞食どもが自分のノミ・シラミを育てるように。


【補足】

* vermine (害虫) は「集合名詞」 なので単数形で使われています。ですので、一匹だけしかいないというわけじゃありません。

* comme のあとは [主語+動詞] のセットが来ています。 主語は les mendiants、動詞は nourrissent です。

* nourrir は choisir、réussir、finir などと同じ活用です。 いわゆる 「第2群規則動詞」 です。 choisir の直説法現在形の活用は 「ああ、俺は苦しいんだ。」 を見てください。

(nourrir の直説法現在形の活用)

je nourris (ジュ ヌリ)
tu nourris (テュ ヌリ)
il nourrit (イル ヌリ)
nous nourrissons (ヌ ヌリソン)
vous nourrissez (ヴ ヌリセ)
ils nourrissent (イル ヌリッス)


【関連情報】

* 前半の解説 「愚かさと過ちと罪と吝嗇が(1)」 をご覧ください。

(読み上げ)
MP3ファイル ( 約2.7MB / Litterature audio.com

* MP3ファイル(音声)ファイルへの直接のリンクですので、クリックするとたいていはそのまま再生されます。
* ファイルを保存する場合は、リンクを右クリックしてファイルを保存するメニューを選んでください。
* 約2分56秒のファイルです。該当箇所は冒頭1秒あたりです。
* Au Lecteur をふくむ 『悪の華』 のMP3ファイルは、BAUDELAIRE, Charles – Les Fleurs du mal (Litterature audio.com) にあります。



2012-02-29

愚かさと過ちと罪と吝嗇が(1)

[フランス語中級]

La sottise, l'erreur, le péché, la lésine,
Occupent nos esprits et travaillent nos corps,
Et nous alimentons nos aimables remords,
Comme les mendiants nourrissent leur vermine.
[Baudelaire, "Les Fleurs du mal", 1861]

ボードレールというフランスの詩人の『悪の華(はな)』という詩集の冒頭 Au lecteur 「読者へ」 の出だしです。

今回は前半の2行を見てみます。

【発音】

La sottise, l'erreur, le péché, la lésine,
ラ ソティーズ レルール ル ペシェ ラ レズィーヌ

Occupent nos esprits et travaillent nos corps,
オキュプ ノゼスプリ エ トラヴァーユ ノ コール

Baudelaire, "Les Fleurs du mal"
ボドレール レ フレール デュ マル

Au lecteur
オ レクトゥール

【語句】

sottise [ソティーズ] (女性名詞) 愚かさ
erreur [エルール] (女性名詞) 過ち、誤り
péché [ペシェ] (男性名詞) (宗教上の)罪 
lésine [レズィーヌ] (女性名詞) 吝嗇(りんしょく)

occuper [オキュペ] (動詞) を占領する、を占める
esprit [エスプリ] (男性名詞) 精神、心
travailler [トゥラヴァイエ] (自動詞) 働く、(他動詞) に働きかける、を悩ませる・苦しめる
corps [コール] (男性名詞) 体、身体、肉体 * 単数でも最後に -s がつきます。

Charles Baudelaire [シャルル ボドレール] 1821-1867。フランスの詩人、批評家。
fleur [フルール] (女性名詞) 花
mal [マル] (男性名詞) 悪、痛み
lecteur : (男性名詞) 読者

【文の構成】

*  「La sottise, l'erreur, le péché, la lésine,」がこの文の主語、述語動詞は occupent と travaillent 。主語が三人称複数なのでそれに合わせて occuper が occupent に、travailler が travaillent になっています。

La sottise, l'erreur, le péché, la lésine,
愚かさと過ちと罪と吝嗇が

Occupent nos esprits
私たちの精神を占め

et travaillent nos corps,
そして私たちの肉体を悩ませる。

【和訳】

_ 愚かさ、過ち、罪、吝嗇が私たちの精神を占領し、私たちの肉体に働きかける。
_ 愚かさと過ちと罪と吝嗇が、われらの心を占拠しわれらの身体を苦しめる。

【関連情報】

(翻訳)
→ 「読者へ」 (壺齋閑話)
→ 「読者へ」 (ボードレール研究サイト)
→ 『悪の華』  (安藤元雄 訳 / 集英社文庫)
→ 『悪の華』 (鈴木信太郎 訳 / 岩波文庫)

(原文)
→ Les Fleurs du mal/1857/Au lecteur (Wikisource)

【豆知識】

芥川龍之介という明治時代の小説家が 「人生は一行のボオドレエルにも若かない。」 と言っています。 ( 「若かない」 は 「しかない」 と読みます。)

或阿呆の一生』 という作品の冒頭です。