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2016-11-21

我消費ス故ニ我有リ

Je dépense, donc je suis.


17世紀のフランスの哲学者デカルト (Descartes) の有名なことばに、

    Je pense, donc je suis.

    ジュ パンス ドンク ジュ スィ

というのがあります。

デカルトの肖像画 
(デカルトの肖像画  ※ fr.wikipedia.org より)


donc は 「それゆえ、したがって」。

後半の je suis の suis ( être ) の意味は、この場合は、

    ~である

ではなくて、

    在る、居る、存在する

のほうです。


ですので、

    Je pense, donc je suis.

は、

    我思う、故に我有り。

などと訳されています。

仏和辞典でも donc の項目にこれが例文として出ていたりします。


そして今回のお題の

    Je dépense, donc je suis.

    ジュ デパンス ドンク ジュ スィ

という表現ですが、人から 「これは誰の言葉なの」 と聞かれて、初めて聞く表現だったので、ちょっとググってみたのですが、たくさんいろんなところで使われていますね。

とくにだれが言い出した言葉というわけではなく、デカルトの表現をもじって、最近いろいろ使われるようになった表現みたいです (あまり確信なし)。


意味は、 dépense が

   dépenser : 消費する

という動詞なので、

    私は消費する、だから私は存在している。

    我消費ス故ニ我有リ

などとなります。


この消費社会においては、消費することが人の存在意義になっている、とか、そういう感じでしょうか。


2016-04-11

良識はこの世でもっとも公平に分配されている (3)

Le bon sens est la chose du monde la mieux partagée ; car chacun pense en être si bien pourvu, que ceux même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose n’ont point coutume d’en désirer plus qu’ils en ont.

(René Descartes, "Discours de la méthode", 1637)

デカルトの 『方法序説』 第一章冒頭の3回目です。

    → 1回目: 良識はこの世でもっとも公平に分配されている (1)
    → 2回目: 良識はこの世でもっとも公平に分配されている (2)

前回までで、

    Le bon sens est la chose du monde la mieux partagée ; car chacun pense en être si bien pourvu, que ...

    良識はこの世で最も良く分配されている。 というのも、だれもがそれをじゅうぶん持っていると思っているので、その結果 ... だからだ

という感じでした。


さて、その続きのうち、

    que ceux même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose

までを見てみたいと思います。

発音は、

    que ceux même qui sont les plus difficiles

    ク ス メーム キ ソン レ プリュ ディフィスィル

    à contenter en toute autre chose

    ア コンタンテ アン トゥット オートル ショーズ

となります。


さいしょの que ですが、これは前回やった、

    si bien ... que ~

    とても ... なのでその結果~だ

の que (接続詞) で、この que のあとには、〈主語 + 動詞〉 がセットされることになります。

ですので、その主語と動詞を見つけようと思って読んでいきます。

と、最初に ceux même qui sont ... となっているので、

    ceux = 〈主語 + 動詞〉 の主語

    sont = 〈主語 + 動詞〉 の動詞

なのか、と思ってはいけません。


sont の前には qui があります。

これは関係代名詞の qui ですね。

関係代名詞の部分 (関係代名詞節) は、直前の名詞 (この場合は ceux ) を修飾します。

sont の主語は qui です。

ですので、sont は先ほどの que の後の 〈主語 + 動詞〉 の 〈動詞〉 の役割はできません。


では、〈主語 + 動詞〉 の 〈動詞〉 はどこにあるのか。

もう少し読んでいくと、

    que ceux même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose n’ont point coutume ...

となっていて、n'ont point に動詞 avoir があります。

なので、

    ceux même [ qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose ] n’ont point coutume

と考えて、que の後の 〈主語 + 動詞〉 の 〈主語〉 は ceux、 〈動詞〉 は ont ではないかと予想をつけます。


それはそうとして、qui 以下の部分 (関係代名詞節) の意味を考えておきましょう。

    qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose

qui は主語になる関係代名詞 (主格の関係代名詞) で、それに対応する動詞が sont です。

qui 以下が修飾している語は、ceux です。

ceux は代名詞 celui の男性複数形です。

代名詞なので、ふつうは前に出た名詞を受けます。

で、ceux より前の部分で、男性の複数名詞がないか探してみると、

    Le bon sens est la chose du monde la mieux partagée ; car chacun pense en être si bien pourvu, que ceux qui sont les plus difficiles ...

...ない、ですね。 複数名詞は。


この ceux ですが、後ろに関係代名詞 (qui や que) が続くときは

    ~な人々

という意味になることがあります。


今回の場合は、

    ceux ... qui sont les plus difficiles à contenter ...

となっています。

〈 difficile à 不定詞 〉 で 「~するのがむずかしい」 です。

ここでは、les plus difficiles なので比較の最上級です。

ですので、

    ~するのがもっともむずかしい人々

になります。

で、「~する」 の部分は contenter 「満足させる」 なので、

    満足させるのがもっともむずかしい人々

です。

    ※ contenter は 「満足させる」 です。 「満足する」 ではありません。


さらに、

    ceux même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose

の、en toute autre chose ですが、

    en toute autre chose

    すべての他の事柄において

となるので、

    ほかのあらゆる事柄においては満足させるのがもっともむずかしい人々

となりますが、最後に、

    ceux même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose

の même が残っています。

même は、名詞の前に来る時は

    同じ

といういみで、

名詞(代名詞)の後ろにくるときは、

    ~でさえ

とか、

    まさにその~

とかになります。


ここでは、代名詞 ceux の後ろに来ているので、

    ~でさえ

といういみにとっておきましょう。

    ※ あとで修正するかもしれません。

すると、

    ceux même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose

    ほかのあらゆる事柄においては満足させるのがもっともむずかしい人々でさえ

となります。

この、「ほかのあらゆる事柄においては満足させるのがもっともむずかしい人々でさえ」 が、 n'ont point の主語 (主部) になります。


まとめ、

    Le bon sens est la chose du monde la mieux partagée ; car chacun pense en être si bien pourvu, que ceux même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose ...

    良識はこの世で最も良く分配されている。 というのも、だれもがそれをじゅうぶん持っていると思っているので、その結果、ほかのあらゆる事柄においては満足させるのがもっともむずかしい人々でさえ ... だからだ。



 Discours de la méthode

2016-03-30

良識はこの世でもっとも公平に分配されている (2)

Le bon sens est la chose du monde la mieux partagée ; car chacun pense en être si bien pourvu, que ceux même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose n’ont point coutume d’en désirer plus qu’ils en ont.

(René Descartes, "Discours de la méthode", 1637)


デカルトの 『方法序説』 第一章冒頭の2回目です。

    → 一回目: 良識はこの世でもっとも公平に分配されている (1)


最初の文、

    Le bon sens est la chose du monde la mieux partagée ;

は、

    良識はこの世で最も良く分配されている

っていうような感じでした。


続く文は、一文が長いです。

    car chacun pense en être si bien pourvu, que ceux même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose n’ont point coutume d’en désirer plus qu’ils en ont.


今日やれそうな部分の発音は、

    car chacun pense en être si bien pourvu,

    カル シャカン パンス アン エートル スィ ビヤン プルヴュ

です。

まず car は、

    というのも、実際~だから

と、前の文の内容の説明や理由を言うときに使う語 (接続詞) ですね。

    ※ 英語だと for になります。


つづく、chacun pense は、chacun が 「おのおの、めいめい、各自」  とか 「だれでも」 という代名詞で、pense の主語なので、

    car chacun pense

で、

    というのも、だれもが...と考えているからだ

という感じです。


そして、動詞 pense の後に en という語が来ていますが、 penser のあとに前置詞 en が来るパターンは見たことないと思います。

いま手元にある 『クラウン仏和辞典』(手元のはけっこう古い版) と 『ロワイヤル仏和中辞典』 を見ても載っていません。

そこで、この en は代名詞あるいは副詞の en なのかな、それとも 〈 penser + 前置詞 en 〉 っていう表現が、もっと調べればほんとはあるのかも、とか思いながら次を見てみましょう。

    car chacun pense en être ...

というように動詞 être の不定詞 (原形) が来ています。

なぜ?

penser の後には動詞の不定詞が来たりするの? それとも 〈 en + 不定詞 〉みたいな表現があったっけ?


またここで辞書を見ると、

    penser + 不定詞

という項目があります!

意味は、

    ~と思う、~するつもりだ

などです。


なので、(とりあえず en を取って)、

    chacun pense être ...

とすると、

    だれもが ... であると思っている

みたいになるはずです。


つづきは、

    car chacun pense en être si bien pourvu, 

 なんですが、si bien は修飾(副詞表現) っぽいからちょっとはずしてみて ( en もなしにして)

    car chacun pense ... être ... pourvu, 

とすると、pourvu は形容詞で、〈 pourvu de ... 〉 で、

    ~を備えた、~を持っている

となるので、

    というのも、だれもが(~を)持っていると思っているからだ  

となります。

    ※ もともと pouvu は動詞 pourvoir (与える、備え付ける) の過去分詞です。


でここで、さっき無視しちゃった en ですが、代名詞 en には、

    de + 前出名詞

の代わりになる用法がありました。

つまり、この場合の 〈 de + 前出名詞 〉 の de は、さっきの、

    pourvu de ...     ~を備えている、~を持っている

の de ... の代わりなんじゃないか!

そうだとすると、

    car chacun pense en être ... pourvu,

で、

    だれもがそれを持っていると思っているからだ

となります。


そして、さっき無視した si bien をもどすと、

    car chacun pense en être si bien pourvu,

となりますが、ここで思い出すと、

    si bien que ~

という表現を習いました。

    (とても ... なので)その結果 ~ だ

です。

今回は、

    car chacun pense en être si bien pourvu, que ...

というふうに、 si bien のあとに形容詞 pourvu が来ていて、その後にヴィルギュル [ , ] があって、その後に que があります。

なので、 〈 si bien que ... 〉 じゃないのかな。

でもこの文を書いたデカルトという人は17世紀の人なので、古い言い方だとそういうのもありなのかも、と思ってとりあえず、

    car chacun pense en être si bien pourvu, que ...

    というのも、だれもがそれをとても持っていると思っているので、その結果 ... だからだ

としておきますが、「とても持っている」 は変なので、

    というのも、だれもがそれをじゅうぶん持っていると思っているので、その結果 ... だからだ

としましょう。


最後に、「それをじゅうぶんもっている」 の 「それ」 とは?


あとまでちゃんと読まないと決められないけど、

    良識はこの世で最も良く分配されている。 というのも、だれもがそれをじゅうぶん持っていると思っているので、その結果 ... だからだ

となるので、「それ」 は 「良識」 ということでよいでしょう。



 Discours de la méthode

 ※ Discours de la méthode 初版のタイトルページ (Wikipedia より)



2016-03-29

良識はこの世でもっとも公平に分配されている (1)

Le bon sens est la chose du monde la mieux partagée ; car chacun pense en être si bien pourvu, que ceux même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose n’ont point coutume d’en désirer plus qu’ils en ont.

(René Descartes, "Discours de la méthode", 1637)

ルネ・デカルト (René Descartes) という、17世紀フランスのむちゃくちゃ有名な科学者・思想家の、これまた有名な 『方法序説』 (Discours de la méthode) という本の第一章の冒頭です。

 Discours de la méthode

 ※ Discours de la méthode 初版のタイトルページ (Wikipedia より)


長いので、今日は最初の一文を見てみます。

Le bon sens est la chose du monde la mieux partagée


発音は、

    Le bon sens est la chose du monde

    ル ボン サンス エ ラ ショーズ デュ モンド

    la mieux partagée

    ラ ミウ パルタジェ

です。


この文の主語は、

    le bon sens

です。

sens にはざっくり言っても

   感覚、意味、方向

などのいろんな意味があります。

どの意味かはこの文の後ろを見てみないと決められないかもしれません。

が、辞書をもうちょっと見てみると、bon sens が項目になっていて、

    良識,分別、公正な判断力、常識

などとあります。

ですので、この文の主語の le bons sens はいちおう、

    良識

と訳しておきましょう。


さて、その良識がどうなのかというと、

    Le bon sens est la chose du monde ...

「良識は世界の事物だ」 と言っているようです。


「世界の事物」 って...?

「良識」 だけじゃなく、「愛」 でも、「帽子」 でも、なんでも 「世界の事物」 じゃん?

それから、chose になぜ定冠詞 la がついてるの?

不定冠詞で、

    Le bon sens est une chose du monde ...

としちゃだめなの?


と、疑問がたくさんわくので、続きを見てみましょう。

    Le bon sens est la chose du monde la mieux partagée

となっています。


partagée は、動詞 partager の過去分詞です。

partager は、

    分ける、分割する、分配する

とか、

    共有する、ともにする

とかです。

まあ、「分ける」 ということは 「共有する」 ことでもあります。


その過去分詞ですから、

    分けられた、分配された、共有された

みたいな感じです。


で、この partagée は女性形 (さいごに e がついている) なので、女性名詞 (の単数形) を修飾しているはずです。

すると、「分けられ、分配され、共有され」 ているのは、直前の

    le monde

ではなくて、それより前 (左) にある、

    la chose

だということになります。

つまり、

    la chose ... partagée

    分配されている...事物

です。


では、partagée についている、la mieux は何でしょうか。

mieux は、そうです、副詞 bien の比較級・最上級です。

ここでは、定冠詞 (la) があるので、比較級ではなく最上級です。

なので、

    la chose ... la mieux partagée

    もっともよく分配されている...事物

となります。

そして、いま省略してた du monde ですが、そのまま訳すと、

    la chose du monde la mieux partagée

    もっともよく分配されている、世界の事物

となって、意味がわからないこともないですが、やっぱりへんです。

monde を辞書で見てみましょう。

....。

おおっ、やっぱりありました。

    du monde

という項目が用意されていて、意味は、

    この世で

となっていますが、用法として

    最上級の強調

と書いてあります。


ですので、

    la chose du monde la mieux partagée

    この世でもっともよく分配されている事物

とするとすっきりします。

ふつうは、du monde が一番後ろにきて、

    la chose la mieux partagée du monde 

となると思いますが、この文は500年近く前なので...。

あるいは、口調上の問題なのか...。


とにかく、全体では、

    Le bon sens est la chose du monde la mieux partagée

    良識はこの世でもっとも良く分配されている事物である

        ↓

    良識はこの世で最も公平に分け与えられたものである

という感じです。


あと、la chose が une chose じゃないのは、最上級で修飾された名詞にはふつう定冠詞がつくからです。

定冠詞の用法のポイントは 「特定する」 っていうことですが、最上級がつくということは 「一番~」 ということで、「一番」 なんだから言葉のうえでは一つしかないことになります。

つまり、「一つに特定される」 っていうことになるので、定冠詞を使うということでしょう。

    ※ 英語の場合も最上級で修飾された名詞には the を使いますね。


あと、けっかとして la chose ... la mieux partagée っていうふうに定冠詞が二個ついちゃいます。 

なれないと変ですね。


■ 原文

フランス語原文は、

    Discours de la méthode (éd. Cousin)/Première partie - Wikisource

などにあります。


■ 翻訳

『方法序説』 の翻訳はいくつかありますが、ここでは、岩波文庫版 を紹介します。