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2013-05-05

二週間爪を伸ばしておけ

On doit laisser pousser ses ongles pendant quinze jours.

( Comte de Lautréamont, "les Chants de Maldoror" )

ロートレアモン伯爵 『マルドロールの歌』 から。

『マルドロールの歌』の文はこれまで二回扱っています。

でも大丈夫、簡単に手でこうやって (2013/02/11)
これは失敬、どうも髪の毛が (2013-02-09)

"Chants de Maldoror" 初版, 1968, Wikipedia より


○ 発音

では、いつものように発音を確認しましょう。

On doit
オン ドワ
laisser pousser
レセ プセ
ses ongles
セゾングル
pendant quinze jours.
ポンドン カーンズ ジュール


実際に耳で聞いてみたい方は :

発音例 (Sound Cloud)

ネイティブの発音じゃないので適度に参考にしてください...。


○ 語句と解説

単語の意味を確認しながら文の内容を見ていきましょう。


_ on

「不定代名詞」、文の主語としてのみ使われます。なぜ「不定」な代名詞かというと、「不特定の人」を示したりするからです。「だれかが」とか「人は」「人々は」とか。

ほかに、「あなたは」「わたしは」「私たちは」みたいに、vous や je や nous などの代わりに使われることもあります。

主語の on に続く動詞は三人称単数形、つまり il や elle のときと同じ活用になります。たとえ on が「私」や「あなた」を内容として指していても、動詞の活用は三人称単数形です。


_ doit

devoir の直説法現在・三人称単数形。 意味は 「~しなければならない」 など。

とりあえず On doit ... で「人は~しなければならない」って感じになりますかね。


_ laisser

「 laisser + 不定詞 」で、「~させる」「~するがままにしておく」です。

* 「不定詞」って動詞の原形(活用しない形)ですね。

そうすると On doit laisser ... で、 「人は~するがままにしておかねばならぬ」。


_ pousser

英語の push 。 「~を押す」という意味ですが、このあとすぐに ses ongles と「爪」という名詞がきているので、ここでは 「生える(はえる)」「伸びる」。

なので、On doit laisser pousser ... までは 「人は伸びっぱなしにしておかなくてはいけない」みたいな感じ。

では、何を伸びっぱなしにしておくのか。

_ ses

所有形容詞 son の複数形です。いみは「彼の」とか「彼女の」とか「それの」とかです。

ところでなぜ「所有形容詞」っていうのか?

所有形容詞は他に mon (私の)とか ton (君の)とかがありますが、いずれも「だれだれの」という意味があります。「だれだれの」ですから「所有」の意味を持っているわけです。

また「形容詞」ですが、形容詞の役割は「名詞を修飾する」こと。 所有形容詞は「だれだれの」という意味ですから、必ずその後には「私の本」「彼の車」みたいに、「本」「車」などの「名詞」が来ます。

つまり、所有形容詞は「名詞を修飾」します。なので所有「形容詞」です。

話はもどって、この ses ongles の ses (彼の、彼女の、それの)の「彼、彼女、それ」とは「だれ」なんでしょうか?


_ ongle

男性名詞で「爪」という意味。

そうすると On doit laisser pousser ses ongles で、「彼の(彼女の)爪を伸ばしっぱなしにしておくべきだ」になりますが、この「爪」は「だれ」の爪なんでしょうか。

さきほど主語の on という代名詞(不定代名詞)は主語にしか使われないと言いました。

では on の所有形容詞ってないんでしょうか?

何が言いたいかというと、たとえば je ならばその所有形容詞は mon、tu なら ton です。 では on の所有形容詞は?

on は所有形容詞の形がないので、ほかの所有形容詞である son を借用します。

ses ongles は 主語 on 自身の爪だということになります。

なので、On doit laisser pousser ses ongles は 「人は自分の爪を伸びるがままにしておかねばならぬ」と解することができます。


_ pendant

前置詞で、「~の間」と期間を表します。 英語だと during でしょうか。


_ quinze

数詞ですね。「15」です。


_ jour

男性名詞。「日」、英語の day 。

quinze jours で「15日」、pendant quinze jours で「15日間」ということになりますが、フランス人は「今日」から数えて15日間と考えるらしく、pendant quinze jours は、今日から数えて15日間、つまり「二週間」となります。

これで、On doit laisser pousser ses ongles pendant quinze jours. は、「人は二週間の間自分の爪を伸びっぱなしにしておかなくてはいけない」 となりますね。


○ 逐語訳

On 人は quinze jours 二週の pendant 間 ses ongles 自分の爪が pousser 伸びる laisser がままにして doit おかねばならぬ。


○ 分かち訳

On 人は doit せねばならぬ laisser pousser 伸びっぱなしに ses ongles 自分の爪を pendant quinze jours 二週の間.


○ 訳例

On doit laisser pousser ses ongles pendant quinze jours.

二週間ずっと爪を伸ばしたままにしておくんだ。


○ リンク

→ 原文: Wikisource

→ 翻訳: 集英社文庫ちくま文庫



2013-05-01

他人を評価するより自分を評価することのほうが

Il est bien plus difficile de se juger soi-même que de juger autrui.

[Antoine de Saint-Exupéry, "Le Petit Prince"]


アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ  『星の王子さま』 から。

今回は 「比較」 の表現と、「非人称構文」 が出てきます。




   ※ Le Petit Prince de Saint Exupéry


■ 発音

Il est
イレ

bien plus difficile
ビャン プリュ ディフィシィル

de se juger soi-même
ドゥ ス ジュジェ スワメーム

que de juger autrui.
ク ドゥ ジュジェ オトゥリュィ

Antoine de Saint-Exupéry
アントワーヌ ドゥ サン テグジュペリ

Le Petit Prince
ル プティ プランス


■ 語句

bien : ここでは次の plus difficile の強調。「かなり」「ずっと」
plus 〜 que ... : 比較の表現。「... より 〜 だ」
juger : 動詞。「を裁く」「判断する、評価する」

se juger : 「裁かれる」「自分を評価する」
soi-même : 代名詞。soi の強勢形。
se juger soi-même : 「自分自身を評価する」

autrui : 代名詞。「他人」
juger autrui : 「他人を評価する」

Antoine de Saint-Exupéry : アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ。 フランスの作家。 1900-1944。
Le Petit Prince : サン=テグジュペリの小説。 日本語訳題名は 『星の王子さま』 など。


■ 文の構成: 非人称構文

この文をもうちょっとわかりやすい単純な形にしてみます。

Il est difficile de se juger soi-même.
(それはむずしい / 自分自身を評価することは)

これは Il est ~ de ... という構文で、「...するのは~だ」 となります。

Il est ~ de ... の 「...」 には動詞の原形(不定詞) がきます。
また、主語の Il はいわゆる 「非人称主語」 とか 「形式主語」 と呼ばれるもので、この Il 自体は意味(内容)をもっていません。

" Il est difficile " だけをみると 「(それは) むずかしい 」 となります。
この場合に 「むずかしい」 とされている 「 Il (それ) 」 の中身は何か?

その中身が、「 de ... 」 の部分になります。

Il est difficile de se juger soi-même.
(自分自身を評価することはむずかしい)

つまり、Il は de以下の 「自分自身を評価すること」 を受けている (指している) わけです。

ですので、この場合の 「 de ... 」 の箇所を 「意味上の主語」 と言ったりもします

* この形式主語については 「 フランス語の非人称のil - 北鎌フランス語講座 - 文法編 」 で詳しく解説されています。


■ 文の構成: 比較

この文中の 「 plus 〜 que ... 」 は、比較の表現で、「... より 〜 だ」 となります。

Il est plus difficile de se juger soi-même que de juger autrui.
(自分自身を評価することは、他人を評価するすることよりむずかしい)


■  強調の bien

plus の前についている bien はplus を強調しています。「ずっと」って感じです。


■ 分かち訳

Il (それは) bien plus difficile よりずっとむずかしい  est です de se juger soi-même 自分自身を評価するのは  que de juger autrui 他人を評価するのより .


■ 逐語訳

(Il それは=) de se juger soi-même 自分自身を評価するのは  que de juger autrui 他人を評価するのより
bien plus difficile よりずっとむずかしい  est です


■ 訳文

Il est bien plus difficile de se juger soi-même que de juger autrui.

自分自身を評価するのは、他人を評価するよりずっとむずかしい。


■ 関連情報

→ 「あのときの王子くん」 (大久保 ゆう 訳 / 青空文庫)