グローバルメニュー

2013-01-26

犬に棒を見せると(ライプニッツ)

フランス語中級

Par exemple : quand on montre le bâton aux chiens, ils se souviennent de la douleur qu'il leur a causée et crient et fuient.

(Leibniz, "Monadologie")




○ 発音

Par exemple パレグザーンプル:
quand on montre カントン モントゥル
le bâton aux chiens ルバトン オ シァン,
ils se souviennent イル ス スヴィエンヌ
de la douleur ドゥ ラ ドゥルール
qu'il leur a causée キル レール ア コゼ
et crient エ クリ
et fuient エ フュイ

Leibniz ライブニッツ
Monadologie モナドロジ


○ 語句

par exemple : たとえば
quand : ここでは接続詞で「〜するとき」
montre : 動詞 montrer の直説法現在、三人称単数形。主語は on 。
montrer : 見せる
bâton : [男性名詞] 棒、杖
aux : 前置詞 à と 定冠詞 les の縮約形
chien : [男性名詞] 犬
souviennent : 動詞 souvenir の直説法現在、三人称複数形。主語は ils (= les chiens)
se souvenir de ... : ...を思い出す、を覚えている
douleur : [女性名詞]  痛み、苦痛
leur : [人称代名詞] 彼らに、それらに(三人称複数)。ここでは「その犬たちに」
causer : …の原因となる,…を引き起こす
crier : 叫ぶ、わめく
fuir : 逃げる
Leibniz : ライプニッツ、1646-1716、ドイツの哲学者
Monadologie : フランス語で書かれた、ライプニッツの著作。日本語では 『単子論』 などと訳されている
monade : [女性名詞] (哲学用語) モナド、単子


○ 逐語訳

たとえば par exemple、人が on 棒を le bâton 犬に aux chiens 見せる montre 時 quand、犬どもは ils その棒が彼らに il leur 引き起こした a causée 痛みを de la douleur 思い出す se souviennent 、そして叫び et crient そして逃げる et fuient 。


○ 文の骨格

この文の作りの一番中心となる部分は、

ils se souviennent de la douleur

です。 「彼らは痛みを思い出す」となります。
ここに quand on montre le bâton が加わって、

quand on montre le bâton
ils se souviennent de la douleur

だと、「人が棒を見せるとき、 彼らは痛みを思い出す 」となります。

文法用語では、ils se souviennent de la douleur を主節、quand on montre le bâton を「従属節」といいます。

さらに「彼ら」は「痛みを思い出す」だけでなく、

quand on montre le bâton
ils  se souviennent de la douleur
  et crient
  et fuient

「叫んだり」「逃げたり」します。

ここまでで、

「人が棒を見せると
 彼らは痛みを思い出し
 そして叫び
 そして逃げる」

となります。

これでこの文の骨格となる作りを確認できました。


○ 説明の追加

まだこの文にはいろいろくっついています。

まず le bâton の後の aux chiens ですが、これは「棒を見せる」相手、対象です。

quand on montre le bâton aux chiens

「人が犬どもに棒を見せるとき」

つぎに、la douleur qu'il leur a causée を見てみます。

qu'il leur a causée は (関係代名詞節で)、 la douleur を修飾しています。

「それ(棒)が彼らに(犬どもに)引き起こした」→「痛み」となります。

a causée は 「 avoir の現在形(直説法現在形) + 動詞の過去分詞」 の組み合わせなので、「複合過去」 というやつになります。

これで、

quand on montre le bâton aux chiens,
ils se souviennent de la douleur qu'il leur a causée
et crient et fuient.

「 人が犬たちに棒を見せるとき
  彼らは、その棒が彼らに引き起こした痛みを思い出し
  叫んで逃げる」

となります。


○ 過去分詞の性数一致

さきほどの la douleur を修飾している qu'il leur a causée で使われている過去分詞 causée は 語末に -e がついていますが、これはなぜでしょうか。

これには、こんな規則がありました。

☆ 複合過去や大過去などで、動詞の目的語(直接目的語)が、過去分詞より前 (左) にあると、過去分詞はその目的語に性数一致する

というやつです。

授業や参考書で学んだのを覚えていますか? 私は大学1年のとき初めてこのことを学んだはずなんですが、まったくその時の記憶はありません!

この箇所 (la douleur qu'il leur a causée) の場合は、動詞 causer (~を引き起こす) の目的語は、a causée より前(左)にある、関係代名詞の que です。

そして、この que はその前(左)にある la douleur という女性名詞単数形を指しています。

けっきょく、複合過去になっている動詞 causer の目的語(直接目的語) が過去分詞 causé より前(左)にあるので、その目的語 ( que => la douleur ) の性数(ここでは女性名詞単数) に合わせて、過去分詞 causé が causée となっています。


○ 翻訳例

「たとえば、イヌに棒を見せたら、イヌはそれがかつて引き起こした苦痛を思いだして、吠えて走り去る。」
( 「単子論(モナドロジー)」 (Robert Latta, 山形浩生 訳) より。英語版からの翻訳です。26番目の文に載っています。)

この英語版原文:

For instance, when a stick is shown to dogs, they remember the pain it has caused them, and howl and run away.
 (Robert Latta 訳, "THE MONADOLOGY")


○ 補足

_ se souvenir の直説法現在形の活用
je me souviens
tu te souviens
il se souvient
nous nous souvenons
vous vous souvenez
ils se souviennent


○ リンク

→ 『モナドロジー・形而上学叙説』 (中公クラシックス):
フランス語原文 (UQAC)