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2014-04-29

おぉ! なんと甘美なことか! 05

On doit laisser pousser ses ongles pendant quinze jours. Oh! Comme il est doux d'arracher brutalement de son lit un enfant qui n'a rien encore sur la lèvre supérieure, et, avec les yeux très ouverts, de faire semblant de passer suavement la main sur son front, en inclinant en arrière ses beaux cheveux!

ロートレアモン伯爵 (Comte de Lautréamont) の 「マルドロールの歌」 ("les Chants de Maldoror") の引用箇所の最後の部分です。

"Chants de Maldoror" 初版, 1968, Wikipedia より


最後は、

    en inclinant en arrière ses beaux cheveux!

です。


発音:

    en inclinant
    オナンクリナン

    en arrière
    オナリエール

    ses beaux cheveux
    セボシュヴ


最初の en inclinant は、

    en + 現在分詞

の形っぽいです。

inclinant は動詞 incliner の現在分詞ですね。

現在分詞の作り方は、

    動詞の直説法現在形の一人称複数の形、つまり nous に対する活用形から、最後の ons を取り去って、代わりに ant を付加する

となります。


incliner の直説法現在形で主語が nous のときは、

   nous inclinons

なので、現在分詞は、

    inclinant

になります。


さて、

    en + 現在分詞

は、ジェロンディフ gérondif というやつです。

ジェロンディフは、

    〜しながら
    〜なので
    〜すると

など、さまざまな意味を持ちます。

どの意味になるかは文脈によります。

つまりそこだけ見ていても決まりません。

なのでもう少し見ていきましょう。


incliner の意味は「傾ける」です。

何を「傾ける」のか。

つまり動詞 incliner (inclinant) の目的語は何か。

    en inclinant en arrière ses beaux cheveux!

en arrière は incliner (inclinant) の目的語にはなりません。

なぜなら incliner (inclinant) の目的語は前置詞を介さないで名詞が直接来るはずだからです。

arrière は「後ろ」という意味の男性名詞。

en arrière で「後ろに」という意味の熟語になります。


では、後ろに何を傾けるのか。

    ses beaux cheveux

をです。

つまり、

    ses beaux cheveux

    彼の 美しい 髪を

です

ここで「彼」は un enfant qui n'a rien encore sur la lèvre supérieure の彼のことでしょう。


では、

    en inclinant en arrière ses beaux cheveux!

は、

    1. その子の美しい髪を後ろに傾けながら

    2. その子の美しい髪を後ろに傾けるので

    3. その子の美しい髪を後ろに傾けると

のどれがいいでしょうか。

ここでは 1 を採りましょう。


あと、「髪を後ろに傾ける」とは、髪をなでつけるということでしょうか。


ここまでで、

    de faire semblant de passer suavement la main sur son front, en inclinant en arrière ses beaux cheveux!

    その子の美しい髪を後ろになでつけながら、手をやさしくそっと額に当ててやるふりをする

みたいになります。


全体では、

    On doit laisser pousser ses ongles pendant quinze jours. Oh! Comme il est doux d'arracher brutalement de son lit un enfant qui n'a rien encore sur la lèvre supérieure, et, avec les yeux très ouverts, de faire semblant de passer suavement la main sur son front, en inclinant en arrière ses beaux cheveux!

    2週間爪を伸ばしておけ。おぉ、なんと甘美なことか。上唇にまだ何も生えていない男の子をそのベットから乱暴に引きずり出し、目を見開いて、その子の美しい髪を後ろになでつけながら、手をやさしくそっと額に当ててやるふりをするのは!


という感じですが、なぜこれが「甘美なこと」なのか。


まだまだ続きがあります。

2014-04-23

巷のフランス語: 25ans

「巷」 は 「ちまた」 と読みます。 「みなと」 ではありません...。

日本の女性誌で 「25ans」 (ヴァンサンカン) というのがあります。

 25ans
※ 25ans (ヴァンサンカン) 2014年 05月号


数字の 25 は、

    vingt-cinq

で、発音は、

    ヴァント サンク

vingt の -g- は発音せず、最後の -t を軽く発音します。


vingt は 20、 cinq は 5 です。

※ イタリア語では 5 は、cinque (チンクエ) というらしい。

なので、 vingt-cinq は 25 です。

ans は名詞 an の複数形で、an は男性名詞、意味は「年・歳」です。


したがって

   25ans / vingt-cinq ans

は、

    25歳

という意味です。


たとえば、

    私は25歳です。

は、

    J'ai vingt-cinq ans.

です。


Wikipedia によると 雑誌 「25ans」 の

    対象は20代以上の「お嬢様」

とのことです。


2014-04-21

おぉ! なんと甘美なことか! 04

On doit laisser pousser ses ongles pendant quinze jours. Oh! Comme il est doux d'arracher brutalement de son lit un enfant qui n'a rien encore sur la lèvre supérieure, et, avec les yeux très ouverts, de faire semblant de passer suavement la main sur son front, en inclinant en arrière ses beaux cheveux!

"Chants de Maldoror" 初版, 1968, Wikipedia より


さて、 avec les yeux très ouverts の続きは、ヴィルギュル(virgule / カンマ)の後に

    de faire semblant de passer suavement la main sur son front

と続きます。


日本語でヴィルギュルやカンマ( , )に相当するのは読点( 、)でしょうか。

    ※ 「読点」は「どくてん」じゃなく「とうてん」と読みましょう。

日本語の読点の用法や使い方はあいまいで、あってもなくてもいいじゃん、とか、人によって使い方は違いますよね、みたいな感じになりがちですが、英語やフランス語のヴィルギュル(カンマ)にはけっこうはっきりした意味(役割)があります。


今の場合、 avec les yeux très ouverts の前後にヴィルギュルがあるのはなぜでしょう。

じつは、ここにヴィルギュルがあることで、ここで挟まれている箇所が、 et が並べている (並置している) 対象じゃないよという印(しるし)になっています。

言いかえると、 ヴィルギュルで挟まれている avec les yeux très ouverts を省いてみると、

Comme il est doux
    d'arracher brutalement de son lit ...
        et
    de faire semblant de passer ...

となって、 et が並べているのは[de + 不定詞]の d'arracher ... と de faire ... とであることが見えやすくなります。


では、

    de faire semblant de passer suavement la main sur son front

の中身を見ていきましょう。


発音は、

    de faire semblant

    ドゥ フェール ソンブラン

    de passer suavement la main

   ドゥ パセ シュアーヴモン ラマン

    sur son front

    シュル ソン フロン

です。


faire は基本単語中の基本単語中ですが、その後に続く samblant とは何か。

かたち的には動詞 sembler (意味は「〜のように見える」など)の現在分詞っぽい(最後が -ant になっているので)です。

そうすると

    faire + 現在分詞

という形式の表現があるのでしょうか。

辞書で faire を調べてみましょう。

...。

faire は基本動詞なので辞書の記述が長いですが、全部の記述に目を通しても「 faire + 現在分詞 」みたいな用法は見当たりません。

別の辞書ではどうでしょうか。

...。

やっぱりそのような表現はありませんでした。


では今度は semblant を辞書で見てみましょう。

semblant は男性名詞で「外観」「見せかけ」という意味が載っています。

sembler という動詞が「〜のようにみえる」という意味なので関連がありますね。

さらに辞書を見ると、

    faire semblant de 名詞/不定詞

という項目があり、

    〜の(〜する)ふりをする

となっています。


そうすると

    de faire semblant de passer suavement la main sur son front

は、

    「passer suavement la main sur son front」 するふりをする

ということになります。


passer は、目的語がないと「通過する」「移動する」、目的語があると「〜を通り過ぎる」「〜を移動させる」みたいな意味になります。

目的語は動詞の動作の対象になる言葉で、品詞は必ず名詞です。

たいていは目的語は動詞のすぐあとに来ます。

いまの場合、

    passer suavement la main sur son front

で passer の後の suavement は目的語ではありません。

suavement は副詞です。

副詞は目的語にはなりません。


なぜ suavement が名詞じゃなくて副詞だと思う(わかる)かと言うと、

    1. 辞書を見るとそう出ている、あるいはこの単語をすでに知っていた

    2. -ment で終わる単語には副詞が多い(名詞のときもある)

    3. 名詞にはたいてい冠詞や冠詞の仲間がくっ着いているが suavement には冠詞類が着いてない

    4. 副詞の基本的な役割は動詞を修飾することだが、その場合、副詞は動詞の直後に来ることが多い

などの点が挙げられます。


じっさいに辞書を引いてみます。

いま電車内でスマートフォンでこの記事を書いているのですが、このスマホには仏和辞典はちょっと版の古い電子版のクラウン仏和辞典とプチロワイヤル仏和辞典が入っています。

そのどちらにも suavement という見出しはなく、suave ならあります。

suave は形容詞で、意味は 両方の辞書とも 「心地よい」「甘美な」と出ています。

形容詞に -ment をつけて副詞になるのはよくあるパターンなので、suavement は形容詞 suave が副詞になったものと考えてよいでしょう。


そうすると意味は、suave が 「心地よい」「甘美な」なので、動詞を修飾するっぽくすれば、

    心地よく
    甘美に

などとなるでしょう。


さらに確かめるため、スマホに入れてある仏々辞典を見てみます。

"Dictionnaire de Français Larousse" という辞書です。

以下のように載っていました。

    suavement
    adverbe
    Littéraire. D'une façon suave.


adverbe(アドヴェルブ)は副詞のことです。

ad- には「追加」「添える」みたいな意味があり、verbe は「動詞」なので、abverbe は「動詞に(意味を)添えるもの」という感じでしょうか。


ついで、 Littéraire. とありますが辞書の画面ではこの部分は色が変えてあり、単語の意味ではなく、この単語が使用される場面が 「文学的」 な場面、つまり日常語ではなく ”文学的” な文章で使われるということらしいです。

たしかにいま見ている On doit laisser pousser ... で始まる文章は、ロートレアモンという人の散文詩というものなので、「文学的」 だと言えるでしょう。


そして、suavement の意味は、

     D'une façon suave.

    デュン ファソン シュアーヴ

「d'une façon + 形容詞」 は「~な仕方で」 といった表現なので、「シュアーヴな仕方で」、つまり、「心地よい仕方で」 「甘美な仕方で」 ということです。

        passer suavement la main sur son front

la main は「手」 という名詞なので、この la main が passer の目的語です。

passer は目的語があるときは「〜を通り過ぎる」「〜を移動させる」などの意味になるので、ここでは

    passer la main



    手を移動させる

といった意味でしょう。


la main の後には sur son front と続きます。

front は son があるので男性名詞だとわかります。(front が女性名詞だったら sa front となるはず。)

front は英語ではフロント、つまり「前の部分」のことですが、フランス語でも「建物の正面」とか「額(ひたい)、おでこ」とかになります。


ここではとりあえず、son front の son はベッドから引き出された男の子、front はその子の額だと考えましょう。

そうすると、

    passer suavement la main sur son front

は、

    心地よい仕方で手をその子の額にに移動させる

あるいは、

    優しく手をその子の額にあててやる

などととなります。


ですので、

   de faire semblant de passer suavement la main sur son front

は、

    優しく手をその子の額にあててやるふりをする

です。


すると、さきほど骨格を抜き出した、

    Comme il est doux
         d'arracher brutalement de son lit ...
            et
        de faire semblant de passer ...

は、

    なんと甘美なことか
        そのベッドから乱暴に引き剥がし
            そして
        優しく手をその子の額にあててやるふりをする (のは)

となります。


ここまでまとめると

    Comme il est doux d'arracher brutalement de son lit un enfant qui n'a rien encore sur la lèvre supérieure, et, avec les yeux très ouverts, de faire semblant de passer suavement la main sur son front ...

    また上唇に何も生えてない男の子を乱暴にベッドから引き出し、そして、目をかっと見開いて、優しく手をその子の額に当ててやるふりをするのは、なんと甘美なことだろうか...

です!

2014-04-11

上級仏単語: déboire

déboire

デボワール

多くは複数形で、「失望」 「幻滅」 という意味。


もともとの意味は、飲み物の不快な後味のことらしいです。

déboire の中に boire (飲む) という語が入っています。