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2014-05-31

父はやっと彼女がそこにいることに...。

Son père semblait enfin s'apercevoir qu'elle était là.

[ Mauriac, "Thérèse Desqueyroux" ]

(フランス語中級)


フランソワ・モーリヤックの『テレーズ・デスケルー』より。

この作品からは 3回目の引用です。

  → 1回目 「それで、きみは満足かね?
  → 2回目 「彼は彼女が言うことを聞いていない


まずは発音をおおまかに確認しましょう。

    Son père semblait enfin
 
    ソンペール ソンブレ アンファン

    s'apercevoir qu'elle était là.
 
    サペルスヴォワール ケレテラ


では文を前のほうから見ていきましょう。

    Son père semblait ...

    彼女の父は...のように見えた。

son はここでは「彼の」ではなく、「彼女の」になります。

なぜかというと、この引用文の文脈から、 son はこの小説の主人公のテレーズのことで、père はテレーズの父なのがわかるからです。

ついで、 enfin が続きます。

    Son père semblait enfin
 
    彼女の父はとうとう...のように見えた。

enfin は 「ついに、とうとう」 としておきます。


次は、動詞 s'apercevoir の原形 (不定詞) です。

    Son père semblait enfin s'apercevoir
 
s'apercevoir は、「気づく」 という意味ですね。

ですので、

    彼女の父はとうとう気づいたように見えた。


この例文のように、 sembler (~のように見える) のあとには、動詞の原形 (不定詞) を続けることができます。


では、何に気づいたのか?

    Son père semblait enfin s'apercevoir qu'...

    彼女の父はとうとう、...ということに気づいたように見えた。

s'apercevoir (気づく) のあとに  que が続くときは、 この qu' (que) の後に  [主語 + 述語動詞] が続くはずで、「~が...であることに気づく」 となります。


続きを見ると、

    Son père semblait enfin s'apercevoir qu'elle était là.

que の後の elle が主語で、était が述語動詞ですね。

là は、副詞で 「そこに、そこで」 というような意味なので、

    elle était là

で、

    彼女はそこにいた

となります。

この場合の 「彼女は」 は 主人公のテレーズです。


全体では、

    Son père semblait enfin s'apercevoir qu'elle était là.

    彼女の父はとうとう、彼女がそこにいることに気づいたように見えた。

となります。

ちょっと変えて、

    彼女の父はやっと、彼女がそこにいることに気づいたらしかった。

ではどうでしょうか。


◆ メモ

フランソワ・モーリアックはこんな感じの人。

     (Wikipediaより)

『テレーズ・デスケルウ』 についてはたとえば 「松岡正剛の千夜千冊」 で紹介されています。