Balzac, "Le cousin Pons 冒頭の第三回目です。
Vers trois heures de l'après-midi, dans le mois d'octobre de l'année 1844, un homme âgé d'une soixantaine d'années, mais à qui tout le monde eût donné plus que cet âge, allait le long du boulevard des Italiens, le nez à la piste, les lèvres papelardes, comme un négociant qui vient de conclure une excellente affaire, ou comme un garçon content de lui-même au sortir d'un boudoir.
→ 第一回目
→ 第二回目
前回までで、
Vers trois heures de l'après-midi, dans le mois d'octobre de l'année 1844, un homme âgé d'une soixantaine d'années, mais à qui
までやりました。
だいたいの意味は、
時は午後三時ころのこと、1844年の10月の月、60かそこらの男が...
という感じでした。
さて、関係代名詞 à qui はとりあえず、
その男に....
という意味にとっておきましょう。
à qui のあとに続くのは、
mais à qui tout le monde eût donné plus que cet âge,
メ ア キ トゥルモンド イ ドネ プリュ ク セッタァジュ
※ eût の発音をカタカナで 「イ」 と書きましたが、発音記号だと [y] です。
アルファベットの u の発音と同じで、唇を突き出して「イ」 を発音するつもりで音をだすと、[y] の音が出ます。
à qui は関係代名詞で 「その人に(とって)(対して)...」 となるので (=前置詞があるので) 、関係代名詞に続く文 (関係代名詞節) では主語になりません。
ということは à qui の後には主語になる語が来るのではないかと予想されます。
つまり、続く
tout le monde
は、主語になると考えて、
みんなは(が)....
としておきます。
問題は、その次の
eût donné
です。
donné は donner の過去分詞でいいとして、eût は何でしょうか?
動詞 avoir の直説法単純過去形ではないかと思った人がいるかもしれません。
確認してみましょう。 avoir の直説法単純過去形の活用は、
j'eus
tu eus
il eut
nous eûmes
vous eûtes
ils eurent
です。
※ カタカナでの発音は、
ジィ
テュ イ
イリィ
ヌゥズィム
ヴゥズィット
イルズィール
となります。
いま主語は tout le monde (すべての人、皆)で、tout le monde が主語のときは動詞は三人称単数になります。
そうすると avoir の直説法単純過去の場合は、
il eut
となっているので、今回の、
tout le monde eût donné
の eût とは微妙に違います。
では、この
eût
は、何でしょうか?
avoir の活用じゃないのかもしれないですが、avoir の直説法単純過去の il eut の eut とほぼ同じなのでやっぱり、avoir が活用したもののような気がします。
辞書で調べてましょう。
今回は、オンラインの辞書で、辞書で有名な Larousse(ラルース) 社のサイトを利用してみます。
まず、Dictionnaire français - Dictionnaires Larousse français monolingue et bilingues en ligne にアクセスします。
→ http://www.larousse.fr/dictionnaires/francais
こんな感じのページです。
ページ上部の入力欄に eût を入力して検索します。
※ eût の真ん中の û がうまく入力できないという人は、今見ているこのページからコピペしてください。
検索結果は、avoir のページが表示されました。
ということは、やはり eût は avoir の活用形のようです。
何の活用なのでしょうか (法と時制は何なのでしょうか)。
右の方にある 「活用」 (CONJUGAISON)ボタンを押してみます。
※ conjugaison は 「動詞の活用」 のことです。 (発音は コンジュゲゾン)。
最初に直説法の活用が一覧表示されました。
直説法は indicatif (アンディカティフ) です。
直説法の活用の一覧を見てみても eût は見当たりませんでした。
次に、indicatif の隣の subjonctif をクリックしてみます。
subjonctif (シュブジョンクティフ) は 「接続法」 です。
普段あまり目にしない活用もあります。
が、よく見ると eût があります!
ここは imparfait (アンパルフェ) とあるので 「半過去」 です。
といっても直説法半過去ではなく、接続法半過去です。
やっと eût が avoir の接続法半過去だということがわかりました。
接続法半過去ってどういうときに使うのでしょうか。
とりあえず文に戻ってみると、
tout le monde eût donné
形としては、
avoirの接続法半過去形 + 動詞の過去分詞
となっています。
この形は、
接続法大過去
と呼ばれます。
接続法大過去とは何か。
なぜここで接続法大過去が使われているのか。
続きます....。