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2015-04-04

1844年10月の午後3時ころ 3

[フランス語中級]

Balzac, "Le cousin Pons 冒頭の第三回目です。

Vers trois heures de l'après-midi, dans le mois d'octobre de l'année 1844, un homme âgé d'une soixantaine d'années, mais à qui tout le monde eût donné plus que cet âge, allait le long du boulevard des Italiens, le nez à la piste, les lèvres papelardes, comme un négociant qui vient de conclure une excellente affaire, ou comme un garçon content de lui-même au sortir d'un boudoir.


    → 第一回目
    → 第二回目


前回までで、


    Vers trois heures de l'après-midi, dans le mois d'octobre de l'année 1844, un homme âgé d'une soixantaine d'années, mais à qui

までやりました。

だいたいの意味は、

    時は午後三時ころのこと、1844年の10月の月、60かそこらの男が...

という感じでした。


さて、関係代名詞 à qui はとりあえず、

    その男に....

という意味にとっておきましょう。


à qui のあとに続くのは、

    mais à qui tout le monde eût donné plus que cet âge,

    メ ア キ トゥルモンド イ ドネ プリュ ク セッタァジュ


※ eût の発音をカタカナで 「イ」 と書きましたが、発音記号だと [y] です。

    アルファベットの u の発音と同じで、唇を突き出して「イ」 を発音するつもりで音をだすと、[y] の音が出ます。



à qui は関係代名詞で 「その人に(とって)(対して)...」 となるので (=前置詞があるので) 、関係代名詞に続く文 (関係代名詞節) では主語になりません。

ということは à qui の後には主語になる語が来るのではないかと予想されます。


つまり、続く

    tout le monde

は、主語になると考えて、

    みんなは(が)....

としておきます。


問題は、その次の

    eût donné

です。

donné は donner の過去分詞でいいとして、eût は何でしょうか?


動詞 avoir の直説法単純過去形ではないかと思った人がいるかもしれません。

確認してみましょう。 avoir の直説法単純過去形の活用は、

    j'eus
    tu eus
    il eut
    nous eûmes
    vous eûtes
    ils eurent

です。

※ カタカナでの発音は、

    ジィ
    テュ イ
    イリィ
    ヌゥズィム
    ヴゥズィット
    イルズィール

となります。


いま主語は tout le monde (すべての人、皆)で、tout le monde が主語のときは動詞は三人称単数になります。

そうすると avoir の直説法単純過去の場合は、

    il eut

となっているので、今回の、

    tout le monde eût donné  

の eût とは微妙に違います。


では、この

    eût

は、何でしょうか?

avoir の活用じゃないのかもしれないですが、avoir の直説法単純過去の il eut の eut とほぼ同じなのでやっぱり、avoir が活用したもののような気がします。


辞書で調べてましょう。

今回は、オンラインの辞書で、辞書で有名な Larousse(ラルース) 社のサイトを利用してみます。


まず、Dictionnaire français - Dictionnaires Larousse français monolingue et bilingues en ligne にアクセスします。

    → http://www.larousse.fr/dictionnaires/francais


こんな感じのページです。




ページ上部の入力欄に eût を入力して検索します。



※ eût の真ん中の û がうまく入力できないという人は、今見ているこのページからコピペしてください。


検索結果は、avoir のページが表示されました。



ということは、やはり eût は avoir の活用形のようです。

何の活用なのでしょうか (法と時制は何なのでしょうか)。

右の方にある 「活用」 (CONJUGAISON)ボタンを押してみます。


※ conjugaison は 「動詞の活用」 のことです。 (発音は コンジュゲゾン)。


最初に直説法の活用が一覧表示されました。

直説法は indicatif (アンディカティフ) です。





直説法の活用の一覧を見てみても eût は見当たりませんでした。



次に、indicatif の隣の subjonctif をクリックしてみます。



subjonctif (シュブジョンクティフ) は 「接続法」 です。


普段あまり目にしない活用もあります。



が、よく見ると eût があります!



ここは imparfait (アンパルフェ) とあるので 「半過去」 です。

といっても直説法半過去ではなく、接続法半過去です。


やっと eût が avoir の接続法半過去だということがわかりました。


接続法半過去ってどういうときに使うのでしょうか。


とりあえず文に戻ってみると、

    tout le monde eût donné  

となっていました。


形としては、

    avoirの接続法半過去形 + 動詞の過去分詞

となっています。

この形は、

    接続法大過去

と呼ばれます。

接続法大過去とは何か。

なぜここで接続法大過去が使われているのか。


続きます....。