「二人の目が出会った」の 2回目です。
※ 小説の引用箇所の直前の情景を描いたイラスト
(出典: The Project Gutenberg, "Sentimental Education")
Frédéric fit un bond et le rattrapa. Elle lui dit :
-- " Je vous remercie, monsieur. "
Leurs yeux se rencontrèrent.
[ Flaubert , "L'Education Sentimentale" ]
風で吹き飛んだ帽子を捕まえてくれたフレデリックにその婦人はどう対応したでしょうか。
その婦人はフレデリックに語りかけます。
Elle lui dit :
エル リュイ ディ
彼女は彼に言った。
lui は「彼に」とも「彼女に」ともなりますが、ここでは帽子を捕まえてくれたフレデリックに、その婦人が何か言ったのです。
そうすると dit は現在形ではないはずです。
dire の直説法現在形は、
je dis ジュ
tu dis
il dit
nous disons
vous dites
ils disent
なので、
Elle lui dit :
は、
彼女は彼に言う
と現在形にとることもできますが、
でもその前からの流れでいけば単純過去形ではないでしょうか。
dire の直説法単純過去形の活用は、
je dis ジュ ディ
tu dis テュ ディ
il dit イル ディ
nous dîmes ヌ ディーム
vous dîtes ヴ デイット
ils dirent イル ディール
なので、一人称(je, tu, il)の活用は直説法現在形も単純過去形も同じです。
さて、その人妻はフレデリックに何と言ったのか。
Je vous remercie, monsieur.
ジュ ヴ ルメルシ ムシュー
「ありがとうございます。」
と、感謝の言葉をかけました。
remercier (ルメルシィエ)は、「〜に感謝する、~にお礼を言う」 といういみです。
ここまでで、
Frédéric fit un bond et le rattrapa. Elle lui dit :
-- " Je vous remercie, monsieur. "
フレデリックは飛び上がって、帽子を捕まえた。
彼女は 「ありがとうございます」 と言った。
という感じになります。
■ 翻訳
翻訳は文庫で手に入るものだけでも数種ありますが、ここでは岩波文庫版を紹介します。
・ 感情教育〈上〉 (岩波文庫)
・ 感情教育〈下〉 (岩波文庫)