L'escalier de bois qui menait au grenier était très raide.
(Guillaume Apollinaire, "Les Exploits d'un jeune Don Juan", 1911)
「ミラボー橋の下 セーヌは流れる」 で有名な ギョーム・アポリネール の小説から。
この文には動詞が 2個出てきます。
menait と était です。
どちらが文の中心となる動詞(文の骨格を作る動詞)でしょうか。
(両方ともそうだ、という可能性もあります。)
menait は qui の後に続いています。 qui はここでは関係代名詞です。
関係代名詞の箇所(関係代名詞節)は、文全体の中心にはなりません。
なぜならば関係代名詞の箇所(関係代名詞節)は、その直前にある名詞を修飾するための箇所なので (その名詞に従属している立場なので)、 文の骨格にはなれないからです。
したがって関係代名詞の箇所を省いてしまっても、その文は文として成立します。
今回の場合、関係代名詞の箇所(関係代名詞節) は、
qui menait au grenier
の箇所なので、ここを省いた文にすると、
L'escalier de bois (....) était très raide.
レスカリエ ドゥ ボワ (...) エテ トゥレ レッドゥ
になります。
主語の部分(主部)は L'escalier de bois で、
escalier (エスカリェ)は男性名詞で「階段」、bois 男性名詞で「木、材木」。
( bois には「森、林」という意味もありますが、ここではこの意味は適しません。)
ですので L'escalier de bois で「木製の階段」 となります。
de bois の前置詞 de は「材質、素材」を表しています。 「材質が木の階段」「木でできた階段」です。
était は動詞 être の直説法半過去形、意味はここでは 「~だった」。
raide は 「(傾斜の)急な、険しい」
したがって L'escalier de bois (....) était très raide. の意味は、「木の階段はとても急だった。」となります。
では、関係代名詞 の箇所 (関係代名詞節)を復活させて考えましょう。
L'escalier de bois ( qui menait au grenier ) était très raide.
発音は、
qui menait au grenier
キムネ オ グルニェ
動詞 menait の不定詞(原形)は mener (ムネ)で、通路や道がどこかに 「つながっている、通じる、至る」ことを表します。
「(どこか)に通じる」 の 「〜に」 の部分は、前置詞の à を使います。
ここでは au grenier へと続きます。
(au は前置詞 à と定冠詞 le が合体したもの。)
grenier は定冠詞 le がついているので男性名詞です。
意味は 「屋根裏部屋」。
menait au grenier で 「屋根裏部屋へと通じていた」 という感じです。
では、「何が」 屋根裏部屋へ通じているのでしょうか。
つまり、動詞 menait の主語は?
それが qui menait ... の関係代名詞 qui になります。
qui は、qui の後に続く動詞の主語であり、同時に関係代名詞の箇所 (関係代名詞節) を直前の名詞に結びつけ、その名詞を修飾する役割をします。
この文の場合は qui が修飾している名詞は(すぐ左の bois )ではなく、 L'escalier になります。
(なぜ bois じゃないかというと意味から考えればそうなると思います。)
なので、
L'escalier ... qui menait au grenier
で、
階段 ← 屋根裏部屋に通じた
の関係になるので、訳すと、
「屋根裏部屋に通じている階段」
となるわけです。
全体では、
L'escalier de bois qui menait au grenier était très raide.
屋根裏部屋へと通じる木の階段はとても(勾配が)急だった。
という感じです。
◆ 作品情報
Guillaume Apollinaire (ギョーム・アポリネール / 1880-1918 ) は詩人・小説家。
"Les Exploits d'un jeune Don Juan" (レゼクスプロワ ダン ジュン ドン ジュアン) は彼のポルノチックな小説作品。
exploit は「快挙、偉業」 といった意味で、この場合はさまざまな女性と関係を持ったという意味を含んでいます。
そのまま訳せば 「若いドン・ジュアンの快挙」 でしょうか。
邦訳は 『若きドン・ジュアンの冒険』 や 『若きドン・ジュアンの手柄ばなし』 というタイトルなどで出ていましたが、現在は手に入りにくいようです。
原文は Wikisource のページで手に入ります。