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2014-08-10

『ロワイヤル仏和中辞典 第2版』のCD-ROMが検索できなくなった!

『 ロワイヤル仏和中辞典』(第2版) は、仏和の中辞典としては一番充実しています。



しかも書籍の辞書データが全文検索できるCD-ROMまでついています!

いちいちCDを挿入したりするのが面倒なときは、CD-ROMの内容をパソコンのハードディスクにコピーしても使えます。

※ ファイル数がとても多いのでコピーには時間がかかります...。

これは便利すぎます。

しかし...。

今日久しぶりに使おうと思って Internet Explorer で検索画面を表示して、検索語句を入力して「検索」ボタンを押しても動きません....

※ この辞書はWebブラウザで検索できるようになっているのですが、対応しているブラウザは Internet Explorer のみで、Google Chrome や Firefox では動きません。

ググってみると、Internet Explorer のバージョン11からの不具合とのことです。

以下のページに対処法が書かれていました。

『ロワイヤル仏和中辞典 第2版』付録CD-ROM修正ファイル ダウンロード・ページ


検索画面トップ用のHTMLファイル 「ロワイヤル仏和.htm」 をダウンロードして、入れ替えるだけなので簡単にできました。

※ ただし、CD-ROMのファイルは入れ替えられないので、これまでCD-ROMから直接検索していた人は、パソコンのハードディスクにデータを全部コピーする必要があります。



2014-07-27

上級仏単語: palmarès

今日の上級フランス単語は

    palmarès

です。

palmarès 受賞者名簿

発音は、

    パルマレス

と、最後の -s も発音します。

    → Forvo で palmarès の発音を確認


品詞は、名詞(男性名詞)。

意味は、

    受賞者名簿

です。


関連する語句に

    palme
    パルム

があります。

palme は女性名詞で、

    棕櫚(しゅろ)

です。

また、

    (勝利や栄誉の象徴としての)棕櫚の枝や葉

という意味があります。

カンヌ国際映画祭の最高賞は、

    Palme d'Or
    パルム ドール

で、or は「金(きん)、黄金」 (男性名詞)なので、訳すと

    黄金の棕櫚

となります。

2014-07-21

上級仏単語: plébiscite

今日の単語は、

    plébiscite

発音は、

    プレビシットゥ

で、男性名詞。

plébiscite 国民投票


いみは、

    国民投票、住民投票

です。


もともとは、古代ローマの平民会議の決議のことで、

プレブス (plebs) が 「平民」 という意味だそうです。


チャンは...だろうか? その5

Tchen tenterait-il de lever la moustiquaire ? Frapperait-il au travers ? L’angoisse lui tordait l’estomac.
André Malraux, "La Condition humaine" (アンドレ・マルロー『人間の条件』 ) 冒頭の文章、第5回目。

André Malraux, "La Condition humaine"
→ André Malraux, "La Condition humaine" (amazon)

    → 4回目

いちおうここまでの訳文は、

チャンは蚊帳をめくり上げようとするのだろうか? 貫いて突くのだろうか?激しい不安で彼の胃がきりきりと痛んだ。

となりました。

残った問題は、
L’angoisse lui tordait l’estomac.

の、lui (彼に)でした。


もう一度直訳してみると、

強い不安が 彼に 胃を きりきり痛ませた。

となりますが、この 「彼に」 はなんなのか。

強い不安が彼の胃をきりきり痛ませた。

なら、

L’angoisse tordait son estomac.

というように、son estomac とならないのか。

同じような例として、たとえばクラウン仏和辞典に以下のような例文と訳文があります。

Je lui ai serré la main.

ジュ リュィ エ セレ ラ マン

私は彼(女)の手を握った.

※ serrer は「握る」です。

日本語訳では「彼の(あるいは彼女の)手を握った」となりますが、仏文では、

J'ai serré sa main.

とはなっていません。


これらの文に共通しているのは、身体(からだ)の一部(胃とか腹とか手とか)をどうこうした、という意味の文だということ。

そして、「彼の(彼女の)何なに」や「私の何なに」を表すのに、son(sa)や mon(ma)ではなく、lui や me が使われ、対象となる名詞(estomac や ventre や main)には定冠詞 (le や la)が付いている、ということです。

lui や me は文法用語で「人称代名詞」といいます。

つまり、身体の一部が動詞の目的語になる時、その身体の所有者を人称代名詞で示している、ということです。

フランス語文法の参考書をみてみましょう。

目黒士門 『現代フランス広文典』 (白水社, 2000) の 159ページ、「補語人称代名詞」 の 「間接補語」の箇所 に以下のようにあります。

「また、身体部分を表す名詞とともに用いられ、所有者を示す。」

その例文として

Il m'a serré la main.

彼は私の手を握った。

という文などが出ています。

この用法で使われる人称代名詞は 「間接補語」 の形になります。

人称代名詞には、「間接補語」 のほかに 「直接補語」 という形などがありました。

一人称や二人称 (私やあなた) のときは、「間接補語」 も 「直接補語」 も形が同じで、 me, te, nous, vous です。

が、三人称では、間接補語は lui, leur、直接補語は le/la, les でした。

※ 目黒士門 『現代フランス広文典』 (白水社) 3,888円






2014-07-13

上級仏単語: peloton

いまフランスでは、ツール・ド・フランス (Tour de France) の真っ最中です。

ツール・ド・フランスは一言でいえば、フランス縦断の自転車レースです。

J SPORTSのサイト 「ツール・ド・フランス2014 : サイクルロードレース」 で情報を得ることができます。

フランスではサッカーのワールドカップと同じかそれ以上の人気があります (たぶん...)。


そして、きょうのフランス語の上級単語は、

    peloton

    プロトン

です。


辞書を引くと、

    男性名詞

で、意味は、

    小さい糸玉(毛糸玉)

と出てます。


もうちょっと辞書を見ると、

    (スポーツで) 競争する小グループの一団

などともあります。


手元にある 『 ディコ仏和辞典』 (第2版)には、

    (マラソン・競馬・自転車競技の) 走者〔馬〕の一団、集団、グループ

となっていてわかりやすい。


つまり、ツール・ド・フランスを報じるフランス語の記事にもこの peloton はよく出てくるのです。


2014-07-12

チャンは...だろうか? その4

Tchen tenterait-il de lever la moustiquaire ? Frapperait-il au travers ? L’angoisse lui tordait l’estomac.

André Malraux, "La Condition humaine" (アンドレ・マルロー『人間の条件』 ) 冒頭の文章、第4回目。

3回目


最初の二つの文は、

    チャンは蚊帳をめくり上げようとするのだろうか? 貫いて突くのだろうか?

というように解釈しておきました。

今日は三つ目の文です。

    L’angoisse lui tordait l’estomac.

発音は、

   ラングワッス リュィ トルデ レストマ

です。


最後の単語 estomac は最後の -c を発音しないので「エストマック」ではなく、「エストマ」になります。

男性名詞で意味は「胃」。

英語の 「胃」の意味の stomach(スタマック)とちょっと似てるけどけっこう違いますね。

さて、

    L’angoisse lui tordait l’estomac.

を、不明な単語をそのままに、前から並べて訳すと、

    アングワッスは 彼に トルデしていた 胃を

となります。

lui は「彼に」と「彼女に」との両方の可能性がありますが、ここは「チャン」のことだと思われるので「彼に」としておきましょう。

日本語の語順っぽくすると、

    アングワッスは 彼に 胃を トルデしていた

という感じでしょうか。


アングワッス(angoisse)は女性名詞で、

    強い不安、苦悩、恐怖
という意味で、単なる「心配」とかじゃなくて、息詰まるような不安です。

とりあえず、

    強い苦悩は 彼に 胃を トルデしていた

となります。


tordait は半過去形です。

不定詞(原形、元の形)は、

    tordre(トルドゥル)

です。

直説法半過去形の活用語幹は、直説法現在形の nous と同じでした。

tordre を直説法現在形に活用させると、

    je tords (ジュ トール)
    tu tords (テュ トール)
    il tord (イル トール)
    nous tordons (ヌ トルドン)
    vous tordez (ヌ トルドン) ヴ トルデ)
    ils tordent (イル トルドゥ)

となるので、nous のときのかたち、

    tordons

から - ons を取った

    tord-

が tordre の半過去形の活用語幹です。


半過去形の活用語尾は、

    je -ais
    tu -ais
    il -ait
    nous -ions
    vous -iez
    ils -aient

でしたので、活用させてみると、

    je tordais
    tu tordais
    il tordait
    nous tordions
    vous tordiez
    ils tordaient

となります。


そして tordre の意味は、

    ねじる、よじる

なので、

    L’angoisse lui tordait l’estomac.

は、

    苦悩は 彼に 胃を ねじっていた(よじらせていた)

となります。

いま手元にある 『プチロワイヤル仏和辞典』 で tordre を調べたら、
    〔胸・腹など〕をきりきり痛ませる

という意味が載っていて、その例文に、

    L'angoisse me tordait le ventre.

    激しい不安で私の胃がきりきりと痛んだ。

と出ているではないですか!

これは、今やってる、

    L’angoisse lui tordait l’estomac.

とほとんど同じです。

違いは、

    lui → me

    l’estomac → le ventre

の二箇所です。

    ※ estomac は「胃」ですが、ventre(ヴォントゥル) は「お腹」です。

すると、

    L’angoisse lui tordait l’estomac.

のほうは、

    激しい不安で彼の胃がきりきりと痛んだ。

と訳せそうです。

訳はこれでいいで良いでしょう。

でも、lui (彼に)が気になります。

もう一度直訳してみると、

    強い不安が 彼に 胃を きりきり痛ませた。

となり、このままでは「彼の胃を」とはなりません。


どうなっているのでしょうか?

続きます...。
André Malraux, "La Condition humaine"
→ André Malraux, "La Condition humaine" (amazon)





2014-06-29

上級仏単語: camouflet

きょうの上級のフランス語単語は、

    カムフレ

です。


綴りは、

    camouflet

男性名詞です。


意味は、

    侮辱、屈辱

となります。



2014-06-28

上級仏単語: chahuter

今日は

    chahuter

という単語です。

発音は

    シャユテ

です。ちょっと発音しづらいかも。


分けて書くと

    cha・hu・ter
    シャ・ユ・テ

です。


動詞で、意味は、

    騒ぐ、野次る

です。


この動詞の名詞形は

    chahut

    シャユ

で、男性名詞。

意味は、

    騒ぎ、野次

になります。


2014-06-26

チャンは...だろうか? その3

Tchen tenterait-il de lever la moustiquaire ? Frapperait-il au travers ? L’angoisse lui tordait l’estomac.
アンドレ・マルロー『人間の条件』 (André Malraux, "La Condition humaine") の出だしの3回目。

2回目

きょうは2文目です。

Frapperait-il au travers ?

発音は、

Frapperait-il
フラプレティル

au travers ?
オ トゥラヴェール

です。


frapperait は、前回みたように、動詞 frapper の条件法現在形ですね。

活用させてみましょう。

je frapperais (ジュ フラプレ)
tu frapperais (テュ フラプレ)
il frapperait (イル フラプレ)
nous frapperions (ヌ フラプリオン)
vous frapperiez (ヴ フラプリエ)
ils frapperaient (イル フラプレ)


frapper には、

打つ, たたく, 殴る; (武器で) 刺す

などの意味があります。

そうすると、

Frapperait-il ... ?

は、

彼(チャン)は...たたくのだろうか?

みたいになりますが、何を「たたく」あるいは「打つ」のでしょうか?


つぎに

au travers

とあります。

au travers は、

横切って、貫いて

という表現なので、

Frapperait-il au travers ?

は、

彼は貫いてたたくのだろうか?

みたいになりますが、これではよくわかりません。


一番最初の文から続けて読むと、

Tchen tenterait-il de lever la moustiquaire ? Frapperait-il au travers ?

でしたので、


チャンは蚊帳をめくり上げようとするのだろうか? 横断して(貫いて)たたくのだろうか? (?)

と訳してみましたが...。

「蚊帳を横断して(貫いて)たたく」 とは?

そこで、frapper の 「(武器で)突く」 という意味を採用して、

チャンは蚊帳をめくり上げようとするのだろうか? 貫いて突くのだろうか?

だと、なんか意味が通じる感じもします。


蚊帳の向こうに人か獲物か何かわからないけど何かがいて(何かがあって)、それをチャンは武器(ナイフ?)で突こうとしているんだけど、薄い蚊帳を持ち上げてから直接その対象を突こうというのか、それとも蚊帳もろともに貫いて刺すのか?

チャンは暗殺者?

ちょっと想像しすぎ?

この二文だけではまだ決められませんね。

ということで、続きます...。


André Malraux, "La Condition humaine"
→ André Malraux, "La Condition humaine" (amazon)


2014-06-22

チャンは...だろうか? その2

Tchen tenterait-il de lever la moustiquaire ?
アンドレ・マルロー『人間の条件』 (André Malraux, "La Condition humaine") の出だしの続きです。

    → 1回目

何の話をしていたかというと、直説法半過去形と条件法現在形の活用が似ているということでした。

前回は直説法半過去形の活用を確認したので今日は条件法現在形の活用です。

すでに見たとおり条件法現在形の活用語尾は、直説法半過去の活用語尾が、

je -ais
tu -ais
il -ait
nous -ions
vous -iez
ils -aient

なので、それに r をつけた形で、
je -rais
tu -rais
il -rait
nous -rions
vous -riez
ils -raient

となるということでした。

では条件法現在形の活用語幹はどうなるのか。

一言でいうと「直説法単純未来形の活用語幹と同じ」となります。

うーむぅ。

では、 「 直説法単純未来形の活用語幹」はどんなだったか。

おおざっぱに言うと、「動詞の不定詞の語末の -r( -r以降 )を取っ払ったもの(ただし例外たくさん)」です。

例えば、

chanter >> chante-
trahir >> trahi-
prendre >> prend-

です。

tenter の場合は、

tenter >> tente-

です。

それぞれ条件法現在形に活用させてみると、

je chanterais (ジュ シャントゥレ)
tu chanterais (テュ シャントゥレ)
il chanterait (イル シャントゥレ)
nous chanterions (ヌ シャントゥリオン)
vous chanteriez (ヴ シャントゥリエ)
ils chanteraient (イル シャントゥレ)

je trahirais (ジュ トゥライレ)
tu trahirais (テュ トゥライレ)
il trahirait (イル トゥライレ)
nous trahirions (ヌ トゥライリオン)
vous trahiriez (ヴ トゥライリエ)
ils trahiraient (イル トゥライレ)

je prendrais (ジュ プランドゥレ)
tu prendrais (テュ プランドゥレ)
il prendrait (イル プランドゥレ)
nous prendrions (ヌ プランドゥリオン)
vous prendriez (ヴ プランドゥリエ)
ils prendraient (イル プランドゥレ)

je tenterais (ジュ タントゥレ)
tu tenterais (テュ タントゥレ)
il tenterait (イル タントゥレ)
nous tenterions (ヌ タントゥリオン)
vous tenteriez (ヴ タントゥリエ)
ils tenteraient (イル タントゥレ)

となります。


さて、

Tchen tenterait-il de lever la moustiquaire ?

の tenterait が直説法半過去形なのか条件法現在形なのかはこれでやっとわかりました。

条件法現在形です!

で、tenter は「試みる」「やってみる」という意味で、「tenter de 不定詞」で「〜しようと試みる」となります。

ですので、

Tchen tenterait-il de ... ?

で、

チャンは…しようとするのだろうか?

となります。


条件法の意味には、断定しないで言う、というのがあるので、「~だろうか」 と訳してみました。

で、チャンは何をしようとしているかというと、

lever la moustiquaire

しようとしています。

lever は「持ち上げる」「上げる」「起こす」です。
moustiquaire は女性名詞で「蚊帳(かや)」です。

「蚊帳」が何かわからない人がいるかもしれません。

広辞苑という有名な分厚い辞書で調べると、

「蚊を防ぐために吊り下げて寝床をおおうもの。麻布・絽・木綿などで作る。かちょう。」

とあります。

寝床(ねどこ)をおおうということはベッドや布団の上に麻布とかを掛けるのでしょうか。ベッドカバーみたいにして。

その中に頭ごともぐるのか。

でも「吊り下げて」とあるので天井からテントみたいにして布団やベッドを覆って、虫が入らないようにするのか。

その場合、夏は暑くて困らないのか。

他の辞書も見てみましょう。

「夏の夜、蚊や害虫を防ぐため、四隅をつって寝床を覆う道具。麻・木綿などで粗く織って作る。かちょう。」 (デジタル大辞泉)

「四隅をつって」とあるのでやはりテントのように寝床やベッドをすっぽり覆うらしいです。

そして「 麻・木綿などで粗く織って作る」ので風通しはあるのでしょう。

※ そういえば、フランス語で「蚊」は、
moustique

でした。 (男性名詞、発音は「ムスティーク」。)


でその蚊帳をチャンは lever しようとしている。

ベッドや布団の四方に吊ってある蚊帳の布の一部をめくり上げるということでしょう。

なので、
Tchen tenterait-il de lever la moustiquaire ?

は、

チャンは蚊帳をめくり上げようとするのだろうか?

みたいになります。

めくり上げて何するのかはまだわかりません。

蚊帳をめくってベッド(布団)に入るのか、それともベッド(布団)から起き上がって蚊帳の外に出ようとしているのか。


André Malraux, "La Condition humaine"
→ André Malraux, "La Condition humaine" (amazon)


(続く)

2014-06-19

上級仏単語: engrenage

今日の上級仏単語は、

    engrenage

です。

発音は、

   オングルナージュ

で、男性名詞です。

※ -age で終わる名詞は男性名詞です。


もともと、

    歯車, ギア

という意味で、そこから歯車にはまり込んだ

  抜差しならない状況, 悪循環

などを意味します。


最近のフランス語のニュースだと、世界の地域紛争などの状況を表すのに使われていました。


検索してみたら、比較的易しいフランス語で 「歯車」の動きを解説しているビデオが見つかりました。

  → Engrenages - 1ère leçon (cours élémentaire)




2014-06-17

巷のフランス語: エピレ

夏が近づいています。

夏と言えば、“脱毛”。

なんてこともないですが、「エピレ」 という名前の脱毛サロンがあります。



エピレは、フランス語の

    épiler (エピレ)

という動詞からとった名前でしょう。


意味は、

    毛を抜く、脱毛する

というそのまんまないみです。


ちなみに、脱毛クリームは、

    crème à épiler  (クレーム ア エピレ)

というようです。

※ crème は女性名詞。


ついでに「シュークリーム」は、

    chou à la crème  (シュー ア ラ クレーム)

です。

chou は男性名詞で「キャベツ」っていう意味ですね。

シュークリームはキャベツに形が似ているから?


チャンは...だろうか? その1

Tchen tenterait-il de lever la moustiquaire ? Frapperait-il au travers ? L’angoisse lui tordait l’estomac ;
- André Malraux, "La Condition humaine", 1934

アンドレ・マルロー (1901-1976)の代表作『人間の条件』(1934)の出だしです。

André Malraux, "La Condition humaine"
→ André Malraux, "La Condition humaine" (amazon)


まず最初の文の発音です。

Tchen tenterait-il
チャン タントゥレティル
de lever la moustiquaire ?
ドゥ ルヴェ ラ ムスティケール

    Tchen ... ?

    チャンは...か?

Tchen は「チャン」で、人の名前でしょう。フランス人の名前じゃなく、東洋人っぽい名前です。

この引用文は小説の冒頭の一文目なので、 Tchen という名前がいきなり出てくると、小説の舞台は東南アジアなのかな、それともこのチャンというアジア人らしき人物が主人公なのかななど、いろいろ思わせられます。


ついで、

    Tchen tenterait-il ...?

と続きます。


tenterait は動詞 tenter の直説法半過去形でしょうか、それとも条件法現在形でしょうか?

直説法半過去形と条件法現在形は活用の語尾が似ているので、慣れていないと迷います。


いまそれぞれの活用の活用語尾だけを抜き出してみます。

※ ハイフン(フランス語ではトレデュニオン trait d'uion)は活用語幹を表しています。

○ 直説法半過去

    je -ais
    tu -ais
    il  -ait
    nous -ions
    vous -iez
    ils     -aient


○ 条件法現在

    je -rais
    tu -rais
    il  -rait
    nous -rions
    vous -riez
    ils     -raient


じっと見ると分かりますが、条件法現在形の活用は、直説法半過去形の活用語尾の前に r を付ければよいです。

つまり直説法半過去形の活用を覚えれば条件法現在形の活用はらくちんです。


さて、それぞれの活用語尾はわかりましたが、活用語幹はどうなるのでしょうか。

まず、 直説法半過去形の活用語幹は、直説法現在形の一人称複数形、つまり nous に対する活用の語幹と同じになります。

つまり tenter という動詞だと、直説法現在形で nous の場合は、

    nous tentons

となりますから、この tentons から最後の -ons を取り去った、

    tent-

が tenter の直説法半過去形の活用語幹です。


活用してみましょう。

    je tentais (ジュ タンテ)
    tu tentais (テュ タンテ)
    il tentait  (イル タンテ)
    nous tentions (ヌゥ タンティオン)
    vous tentiez  (ヴゥ タンティエ)
    ils tentaient   (イル タンテ)


話は戻って、そんな面倒なこと言わなくても、動詞の原形(不定詞)から -er を取ったのが直説法半過去形の活用語幹だと言えばいいのでは?

たしかに tenter や aimer など -er で終わる動詞(いわゆる第一群規則活用動詞)はそう言えるかもしれません。

が、たとえば finir だとそうはいきません。

finir の最後の -ir を取り去った fin- は直説法半過去形の活用語幹にはならないのです。

finir の直説法現在形の活用は、

    je finis  (ジュ フィニ)
    tu finis (テュ フィニ)
    il finit   (イル フィニ)
    nous finissons (ヌ フィニソン)
    vous finissez   (ヴ フィニセ)
    ils finissent     (イル フィニッス)

となるので、 nous finissons の finissons から最後の -ons を取り除いた、finiss- が直説法半過去形の活用語幹になります。


ですので finir の直説法半過去形の活用は、

    je finissais   (ジュ フィニセ)
    tu finissais   (テュ フィニセ)
    il finissait    (イル フィニセ)
    nous finissions  (ヌ フィニスィオン)
    vous finissiez   (ヴ フィニスィエ)
    ils finissaient    (イル フィニセ)

となります。

(続く)


◇ 翻訳

『人間の条件』の翻訳は新潮文庫から出ていたようですが、今は手に入らないようです。

Amazon.co.jp のマーケットプレイスでは数千円で出てたりします。



2014-05-31

父はやっと彼女がそこにいることに...。

Son père semblait enfin s'apercevoir qu'elle était là.

[ Mauriac, "Thérèse Desqueyroux" ]

(フランス語中級)


フランソワ・モーリヤックの『テレーズ・デスケルー』より。

この作品からは 3回目の引用です。

  → 1回目 「それで、きみは満足かね?
  → 2回目 「彼は彼女が言うことを聞いていない


まずは発音をおおまかに確認しましょう。

    Son père semblait enfin
 
    ソンペール ソンブレ アンファン

    s'apercevoir qu'elle était là.
 
    サペルスヴォワール ケレテラ


では文を前のほうから見ていきましょう。

    Son père semblait ...

    彼女の父は...のように見えた。

son はここでは「彼の」ではなく、「彼女の」になります。

なぜかというと、この引用文の文脈から、 son はこの小説の主人公のテレーズのことで、père はテレーズの父なのがわかるからです。

ついで、 enfin が続きます。

    Son père semblait enfin
 
    彼女の父はとうとう...のように見えた。

enfin は 「ついに、とうとう」 としておきます。


次は、動詞 s'apercevoir の原形 (不定詞) です。

    Son père semblait enfin s'apercevoir
 
s'apercevoir は、「気づく」 という意味ですね。

ですので、

    彼女の父はとうとう気づいたように見えた。


この例文のように、 sembler (~のように見える) のあとには、動詞の原形 (不定詞) を続けることができます。


では、何に気づいたのか?

    Son père semblait enfin s'apercevoir qu'...

    彼女の父はとうとう、...ということに気づいたように見えた。

s'apercevoir (気づく) のあとに  que が続くときは、 この qu' (que) の後に  [主語 + 述語動詞] が続くはずで、「~が...であることに気づく」 となります。


続きを見ると、

    Son père semblait enfin s'apercevoir qu'elle était là.

que の後の elle が主語で、était が述語動詞ですね。

là は、副詞で 「そこに、そこで」 というような意味なので、

    elle était là

で、

    彼女はそこにいた

となります。

この場合の 「彼女は」 は 主人公のテレーズです。


全体では、

    Son père semblait enfin s'apercevoir qu'elle était là.

    彼女の父はとうとう、彼女がそこにいることに気づいたように見えた。

となります。

ちょっと変えて、

    彼女の父はやっと、彼女がそこにいることに気づいたらしかった。

ではどうでしょうか。


◆ メモ

フランソワ・モーリアックはこんな感じの人。

     (Wikipediaより)

『テレーズ・デスケルウ』 についてはたとえば 「松岡正剛の千夜千冊」 で紹介されています。


2014-05-22

上級仏単語; équitable

フランス語の上級単語です。


「上級」の意味は、ふだんあまり目にしないけど、新聞などでたまに出てくる単語、みたいな感じです。

市販されているフランス語基本単語集には載っていないような単語です。

これは上級じゃなくて中級じゃないの? とか、これはよく単語集にも載っているよ、 というのもあると思いますが、そのへんは適当です...。


今日は、

    équitable

です。

発音は、

    エキターブル




意味は

    公平な、公正な

で、形容詞です。


単語の最後が -able で終わるのは形容詞ですね。


équitable という単語は、英語の equal (イーコォル) と、意味も似てるし、関係があるのか?

調べてみると、やっぱり、

    equ-

という部分はラテン語から来ていて、

    等しい

という意味があるそうです。


たとえば、スペースアルクの 「語源辞典」 の equivalence (発音: エクィヴァレンス; 意味 「等価」) という単語のページに載っています。

で、このスペースアルクの同じページに equal のほかに equitable という同じ綴りの単語もありました。

英語でも

    equitable (エクィタブル)

という語があり、意味も 「公平な、公正な」 っていう意味です!


2014-05-12

巷のフランス語: デブリ

最近、原子力発電所の事故関連で 「デブリ」 という言葉を耳にします。

「デブリ」 は、新聞社のWebサイトなどを検索すると 「原発事故で溶け落ちた燃料」 のこと。

  ※ たとえば2013年11月7日の産経ニュース 「燃料取り出し目前 福島第1「4号機」プール公開 溶け落ちた燃料、最大の障壁」 など。


英語の辞書を見ると、

    debris : 破片、残骸

などとなっていて、「フランス語」 から来ている語句だとありました。


フランス語で見ると、

    débris

で、男性名詞、意味は同じく、

    破片、残骸

となっています。


あと、よく 「スペースデブリ」 という言葉も聞きます。

こちらは 「スペース」 (space) 、つまり宇宙に残った 「破片、残骸」 で、 おもに宇宙衛星とかの残骸が宇宙空間にただよって地球のまわりを回っていて問題になっているという文脈で出てくるようです。


下の写真は、Wikipediaに載っている、地上に落下してきたスペースデブリの写真です。

Debris-sAfrica.jpg
"Debris-sAfrica". Licensed under Public domain via ウィキメディア・コモンズ.




2014-04-29

おぉ! なんと甘美なことか! 05

On doit laisser pousser ses ongles pendant quinze jours. Oh! Comme il est doux d'arracher brutalement de son lit un enfant qui n'a rien encore sur la lèvre supérieure, et, avec les yeux très ouverts, de faire semblant de passer suavement la main sur son front, en inclinant en arrière ses beaux cheveux!

ロートレアモン伯爵 (Comte de Lautréamont) の 「マルドロールの歌」 ("les Chants de Maldoror") の引用箇所の最後の部分です。

"Chants de Maldoror" 初版, 1968, Wikipedia より


最後は、

    en inclinant en arrière ses beaux cheveux!

です。


発音:

    en inclinant
    オナンクリナン

    en arrière
    オナリエール

    ses beaux cheveux
    セボシュヴ


最初の en inclinant は、

    en + 現在分詞

の形っぽいです。

inclinant は動詞 incliner の現在分詞ですね。

現在分詞の作り方は、

    動詞の直説法現在形の一人称複数の形、つまり nous に対する活用形から、最後の ons を取り去って、代わりに ant を付加する

となります。


incliner の直説法現在形で主語が nous のときは、

   nous inclinons

なので、現在分詞は、

    inclinant

になります。


さて、

    en + 現在分詞

は、ジェロンディフ gérondif というやつです。

ジェロンディフは、

    〜しながら
    〜なので
    〜すると

など、さまざまな意味を持ちます。

どの意味になるかは文脈によります。

つまりそこだけ見ていても決まりません。

なのでもう少し見ていきましょう。


incliner の意味は「傾ける」です。

何を「傾ける」のか。

つまり動詞 incliner (inclinant) の目的語は何か。

    en inclinant en arrière ses beaux cheveux!

en arrière は incliner (inclinant) の目的語にはなりません。

なぜなら incliner (inclinant) の目的語は前置詞を介さないで名詞が直接来るはずだからです。

arrière は「後ろ」という意味の男性名詞。

en arrière で「後ろに」という意味の熟語になります。


では、後ろに何を傾けるのか。

    ses beaux cheveux

をです。

つまり、

    ses beaux cheveux

    彼の 美しい 髪を

です

ここで「彼」は un enfant qui n'a rien encore sur la lèvre supérieure の彼のことでしょう。


では、

    en inclinant en arrière ses beaux cheveux!

は、

    1. その子の美しい髪を後ろに傾けながら

    2. その子の美しい髪を後ろに傾けるので

    3. その子の美しい髪を後ろに傾けると

のどれがいいでしょうか。

ここでは 1 を採りましょう。


あと、「髪を後ろに傾ける」とは、髪をなでつけるということでしょうか。


ここまでで、

    de faire semblant de passer suavement la main sur son front, en inclinant en arrière ses beaux cheveux!

    その子の美しい髪を後ろになでつけながら、手をやさしくそっと額に当ててやるふりをする

みたいになります。


全体では、

    On doit laisser pousser ses ongles pendant quinze jours. Oh! Comme il est doux d'arracher brutalement de son lit un enfant qui n'a rien encore sur la lèvre supérieure, et, avec les yeux très ouverts, de faire semblant de passer suavement la main sur son front, en inclinant en arrière ses beaux cheveux!

    2週間爪を伸ばしておけ。おぉ、なんと甘美なことか。上唇にまだ何も生えていない男の子をそのベットから乱暴に引きずり出し、目を見開いて、その子の美しい髪を後ろになでつけながら、手をやさしくそっと額に当ててやるふりをするのは!


という感じですが、なぜこれが「甘美なこと」なのか。


まだまだ続きがあります。

2014-04-23

巷のフランス語: 25ans

「巷」 は 「ちまた」 と読みます。 「みなと」 ではありません...。

日本の女性誌で 「25ans」 (ヴァンサンカン) というのがあります。

 25ans
※ 25ans (ヴァンサンカン) 2014年 05月号


数字の 25 は、

    vingt-cinq

で、発音は、

    ヴァント サンク

vingt の -g- は発音せず、最後の -t を軽く発音します。


vingt は 20、 cinq は 5 です。

※ イタリア語では 5 は、cinque (チンクエ) というらしい。

なので、 vingt-cinq は 25 です。

ans は名詞 an の複数形で、an は男性名詞、意味は「年・歳」です。


したがって

   25ans / vingt-cinq ans

は、

    25歳

という意味です。


たとえば、

    私は25歳です。

は、

    J'ai vingt-cinq ans.

です。


Wikipedia によると 雑誌 「25ans」 の

    対象は20代以上の「お嬢様」

とのことです。


2014-04-21

おぉ! なんと甘美なことか! 04

On doit laisser pousser ses ongles pendant quinze jours. Oh! Comme il est doux d'arracher brutalement de son lit un enfant qui n'a rien encore sur la lèvre supérieure, et, avec les yeux très ouverts, de faire semblant de passer suavement la main sur son front, en inclinant en arrière ses beaux cheveux!

"Chants de Maldoror" 初版, 1968, Wikipedia より


さて、 avec les yeux très ouverts の続きは、ヴィルギュル(virgule / カンマ)の後に

    de faire semblant de passer suavement la main sur son front

と続きます。


日本語でヴィルギュルやカンマ( , )に相当するのは読点( 、)でしょうか。

    ※ 「読点」は「どくてん」じゃなく「とうてん」と読みましょう。

日本語の読点の用法や使い方はあいまいで、あってもなくてもいいじゃん、とか、人によって使い方は違いますよね、みたいな感じになりがちですが、英語やフランス語のヴィルギュル(カンマ)にはけっこうはっきりした意味(役割)があります。


今の場合、 avec les yeux très ouverts の前後にヴィルギュルがあるのはなぜでしょう。

じつは、ここにヴィルギュルがあることで、ここで挟まれている箇所が、 et が並べている (並置している) 対象じゃないよという印(しるし)になっています。

言いかえると、 ヴィルギュルで挟まれている avec les yeux très ouverts を省いてみると、

Comme il est doux
    d'arracher brutalement de son lit ...
        et
    de faire semblant de passer ...

となって、 et が並べているのは[de + 不定詞]の d'arracher ... と de faire ... とであることが見えやすくなります。


では、

    de faire semblant de passer suavement la main sur son front

の中身を見ていきましょう。


発音は、

    de faire semblant

    ドゥ フェール ソンブラン

    de passer suavement la main

   ドゥ パセ シュアーヴモン ラマン

    sur son front

    シュル ソン フロン

です。


faire は基本単語中の基本単語中ですが、その後に続く samblant とは何か。

かたち的には動詞 sembler (意味は「〜のように見える」など)の現在分詞っぽい(最後が -ant になっているので)です。

そうすると

    faire + 現在分詞

という形式の表現があるのでしょうか。

辞書で faire を調べてみましょう。

...。

faire は基本動詞なので辞書の記述が長いですが、全部の記述に目を通しても「 faire + 現在分詞 」みたいな用法は見当たりません。

別の辞書ではどうでしょうか。

...。

やっぱりそのような表現はありませんでした。


では今度は semblant を辞書で見てみましょう。

semblant は男性名詞で「外観」「見せかけ」という意味が載っています。

sembler という動詞が「〜のようにみえる」という意味なので関連がありますね。

さらに辞書を見ると、

    faire semblant de 名詞/不定詞

という項目があり、

    〜の(〜する)ふりをする

となっています。


そうすると

    de faire semblant de passer suavement la main sur son front

は、

    「passer suavement la main sur son front」 するふりをする

ということになります。


passer は、目的語がないと「通過する」「移動する」、目的語があると「〜を通り過ぎる」「〜を移動させる」みたいな意味になります。

目的語は動詞の動作の対象になる言葉で、品詞は必ず名詞です。

たいていは目的語は動詞のすぐあとに来ます。

いまの場合、

    passer suavement la main sur son front

で passer の後の suavement は目的語ではありません。

suavement は副詞です。

副詞は目的語にはなりません。


なぜ suavement が名詞じゃなくて副詞だと思う(わかる)かと言うと、

    1. 辞書を見るとそう出ている、あるいはこの単語をすでに知っていた

    2. -ment で終わる単語には副詞が多い(名詞のときもある)

    3. 名詞にはたいてい冠詞や冠詞の仲間がくっ着いているが suavement には冠詞類が着いてない

    4. 副詞の基本的な役割は動詞を修飾することだが、その場合、副詞は動詞の直後に来ることが多い

などの点が挙げられます。


じっさいに辞書を引いてみます。

いま電車内でスマートフォンでこの記事を書いているのですが、このスマホには仏和辞典はちょっと版の古い電子版のクラウン仏和辞典とプチロワイヤル仏和辞典が入っています。

そのどちらにも suavement という見出しはなく、suave ならあります。

suave は形容詞で、意味は 両方の辞書とも 「心地よい」「甘美な」と出ています。

形容詞に -ment をつけて副詞になるのはよくあるパターンなので、suavement は形容詞 suave が副詞になったものと考えてよいでしょう。


そうすると意味は、suave が 「心地よい」「甘美な」なので、動詞を修飾するっぽくすれば、

    心地よく
    甘美に

などとなるでしょう。


さらに確かめるため、スマホに入れてある仏々辞典を見てみます。

"Dictionnaire de Français Larousse" という辞書です。

以下のように載っていました。

    suavement
    adverbe
    Littéraire. D'une façon suave.


adverbe(アドヴェルブ)は副詞のことです。

ad- には「追加」「添える」みたいな意味があり、verbe は「動詞」なので、abverbe は「動詞に(意味を)添えるもの」という感じでしょうか。


ついで、 Littéraire. とありますが辞書の画面ではこの部分は色が変えてあり、単語の意味ではなく、この単語が使用される場面が 「文学的」 な場面、つまり日常語ではなく ”文学的” な文章で使われるということらしいです。

たしかにいま見ている On doit laisser pousser ... で始まる文章は、ロートレアモンという人の散文詩というものなので、「文学的」 だと言えるでしょう。


そして、suavement の意味は、

     D'une façon suave.

    デュン ファソン シュアーヴ

「d'une façon + 形容詞」 は「~な仕方で」 といった表現なので、「シュアーヴな仕方で」、つまり、「心地よい仕方で」 「甘美な仕方で」 ということです。

        passer suavement la main sur son front

la main は「手」 という名詞なので、この la main が passer の目的語です。

passer は目的語があるときは「〜を通り過ぎる」「〜を移動させる」などの意味になるので、ここでは

    passer la main



    手を移動させる

といった意味でしょう。


la main の後には sur son front と続きます。

front は son があるので男性名詞だとわかります。(front が女性名詞だったら sa front となるはず。)

front は英語ではフロント、つまり「前の部分」のことですが、フランス語でも「建物の正面」とか「額(ひたい)、おでこ」とかになります。


ここではとりあえず、son front の son はベッドから引き出された男の子、front はその子の額だと考えましょう。

そうすると、

    passer suavement la main sur son front

は、

    心地よい仕方で手をその子の額にに移動させる

あるいは、

    優しく手をその子の額にあててやる

などととなります。


ですので、

   de faire semblant de passer suavement la main sur son front

は、

    優しく手をその子の額にあててやるふりをする

です。


すると、さきほど骨格を抜き出した、

    Comme il est doux
         d'arracher brutalement de son lit ...
            et
        de faire semblant de passer ...

は、

    なんと甘美なことか
        そのベッドから乱暴に引き剥がし
            そして
        優しく手をその子の額にあててやるふりをする (のは)

となります。


ここまでまとめると

    Comme il est doux d'arracher brutalement de son lit un enfant qui n'a rien encore sur la lèvre supérieure, et, avec les yeux très ouverts, de faire semblant de passer suavement la main sur son front ...

    また上唇に何も生えてない男の子を乱暴にベッドから引き出し、そして、目をかっと見開いて、優しく手をその子の額に当ててやるふりをするのは、なんと甘美なことだろうか...

です!

2014-04-11

上級仏単語: déboire

déboire

デボワール

多くは複数形で、「失望」 「幻滅」 という意味。


もともとの意味は、飲み物の不快な後味のことらしいです。

déboire の中に boire (飲む) という語が入っています。