Pas de nuages, pas de vent.
19世紀の作家フロベール (Flaubert) の手紙、第4回目です。
(手紙の宛先のルイーズ・コレ)
ここまでは、
Le ciel est pur ; la lune brille. J'entends des marins chanter qui lèvent l'ancre pour partir avec le flot qui va venir.
で、そこにきょうは、
Pas de nuages, pas de vent.
パ ド ニュアージュ パ ド ヴォン
と続きます。
nuage は 「雲」 、vent は 「風」 ですね。 (いずれも男性名詞)
では、pas de ... は何でしょうか。
pas といえば、否定の ne ... pas で使う pas の他に、名詞で 「歩(ほ)、歩み」 という意味の pas があります (男性名詞)。
ここではどちらなのかというと、この pas de ... は、
Il n'y a pas de nuages.
Il n'y a pas de vent.
の pas 以降だけが残ったものなのです。
なので、意味としては、
雲もなく、月もない
という感じです。
pas de の de は何かというと、
動詞の目的語につく不定冠詞・部分冠詞は、否定文では de になる
みたいな規則がありました。
いま、
Il n'y a pas de nuages.
Il n'y a pas de vent.
という否定文を肯定文にしてみると、
Il y a des nuages.
Il y a du vent.
となり、数えられる名詞の nuage の複数形には不定冠詞の複数形の des が、数えられない名詞の vent には部分冠詞の du がついています。
両者ともに、動詞 a (= avoir) の目的語になっていて、この動詞 a が否定されているので、
des => de
du => de
となっています。
ここまでの意味を確認しておきましょう。
Le ciel est pur ; la lune brille. J'entends des marins chanter qui lèvent l'ancre pour partir avec le flot qui va venir. Pas de nuages, pas de vent.
空は澄み渡り、月は輝いている。 やって来る潮に乗って出発しようと、錨を引き上げる水夫たちの歌声が聞こえる。雲もなく、風もない。
空は澄み渡り、月は輝いている。 やって来る潮に乗って出発しようと、錨を引き上げる水夫たちの歌声が聞こえる。雲もなく、風もない。