Le bon sens est la chose du monde la mieux partagée ; car chacun pense en être si bien pourvu, que ceux même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose n’ont point coutume d’en désirer plus qu’ils en ont.
(René Descartes, "Discours de la méthode", 1637)
デカルトの 『方法序説』 第一章冒頭の3回目です。
→ 1回目: 良識はこの世でもっとも公平に分配されている (1)
→ 2回目: 良識はこの世でもっとも公平に分配されている (2)
前回までで、
Le bon sens est la chose du monde la mieux partagée ; car chacun pense en être si bien pourvu, que ...
良識はこの世で最も良く分配されている。 というのも、だれもがそれをじゅうぶん持っていると思っているので、その結果 ... だからだ
という感じでした。
さて、その続きのうち、
que ceux même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose
までを見てみたいと思います。
発音は、
que ceux même qui sont les plus difficiles
ク ス メーム キ ソン レ プリュ ディフィスィル
à contenter en toute autre chose
ア コンタンテ アン トゥット オートル ショーズ
となります。
さいしょの que ですが、これは前回やった、
si bien ... que ~
とても ... なのでその結果~だ
の que (接続詞) で、この que のあとには、〈主語 + 動詞〉 がセットされることになります。
ですので、その主語と動詞を見つけようと思って読んでいきます。
と、最初に ceux même qui sont ... となっているので、
ceux = 〈主語 + 動詞〉 の主語
sont = 〈主語 + 動詞〉 の動詞
なのか、と思ってはいけません。
sont の前には qui があります。
これは関係代名詞の qui ですね。
関係代名詞の部分 (関係代名詞節) は、直前の名詞 (この場合は ceux ) を修飾します。
sont の主語は qui です。
ですので、sont は先ほどの que の後の 〈主語 + 動詞〉 の 〈動詞〉 の役割はできません。
では、〈主語 + 動詞〉 の 〈動詞〉 はどこにあるのか。
もう少し読んでいくと、
que ceux même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose n’ont point coutume ...
となっていて、n'ont point に動詞 avoir があります。
なので、
ceux même [ qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose ] n’ont point coutume
と考えて、que の後の 〈主語 + 動詞〉 の 〈主語〉 は ceux、 〈動詞〉 は ont ではないかと予想をつけます。
それはそうとして、qui 以下の部分 (関係代名詞節) の意味を考えておきましょう。
qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose
qui は主語になる関係代名詞 (主格の関係代名詞) で、それに対応する動詞が sont です。
qui 以下が修飾している語は、ceux です。
ceux は代名詞 celui の男性複数形です。
代名詞なので、ふつうは前に出た名詞を受けます。
で、ceux より前の部分で、男性の複数名詞がないか探してみると、
Le bon sens est la chose du monde la mieux partagée ; car chacun pense en être si bien pourvu, que
ceux qui sont les plus difficiles ...
...ない、ですね。 複数名詞は。
この ceux ですが、後ろに関係代名詞 (qui や que) が続くときは
~な人々
という意味になることがあります。
今回の場合は、
ceux ... qui sont les plus difficiles à contenter ...
となっています。
〈 difficile à 不定詞 〉 で 「~するのがむずかしい」 です。
ここでは、les plus difficiles なので比較の最上級です。
ですので、
~するのがもっともむずかしい人々
になります。
で、「~する」 の部分は contenter 「満足させる」 なので、
満足させるのがもっともむずかしい人々
です。
※ contenter は 「満足させる」 です。 「満足する」 ではありません。
さらに、
ceux même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose
の、en toute autre chose ですが、
en toute autre chose
すべての他の事柄において
となるので、
ほかのあらゆる事柄においては満足させるのがもっともむずかしい人々
となりますが、最後に、
ceux
même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose
の même が残っています。
même は、名詞の前に来る時は
同じ
といういみで、
名詞(代名詞)の後ろにくるときは、
~でさえ
とか、
まさにその~
とかになります。
ここでは、代名詞 ceux の後ろに来ているので、
~でさえ
といういみにとっておきましょう。
※ あとで修正するかもしれません。
すると、
ceux même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose
ほかのあらゆる事柄においては満足させるのがもっともむずかしい人々でさえ
となります。
この、「ほかのあらゆる事柄においては満足させるのがもっともむずかしい人々でさえ」 が、 n'ont point の主語 (主部) になります。
まとめ、
Le bon sens est la chose du monde la mieux partagée ; car chacun pense en être si bien pourvu, que ceux même qui sont les plus difficiles à contenter en toute autre chose ...
良識はこの世で最も良く分配されている。 というのも、だれもがそれをじゅうぶん持っていると思っているので、その結果、ほかのあらゆる事柄においては満足させるのがもっともむずかしい人々でさえ ... だからだ。