グローバルメニュー

2015-10-15

私の心に涙降る 3 (ヴェルレーヌ)

Gustave Caillebotte, "Rue de Paris, temps de pluie", 1877


    Il pleure dans mon coeur
    Comme il pleut sur la ville ;
    Quelle est cette langueur
    Qui pénètre mon coeur ?


ポール・ヴェルレーヌ の詩の冒頭、3回めです。

    → 1回目 私の心に涙降る 1
    → 2回目 私の心に涙降る 2

今日は三行目を見てみます。

    Quelle est cette langueur

    ケレ セット ラングール

quelle は疑問形容詞 quel の女性形です。

この文の主語である cette langueur が女性名詞なので、それに一致して女性形の quelle になっています。

langueur は、

    もの憂さ、けだるさ、憂愁、やるせなさ、恋わずらい

などなので、

    Quelle est cette langueur

で、

    このけだるさは何だろう

というかんじです。


つづく、

    Qui pénètre mon coeur ?

    キ ペネートル モン クール

の qui は疑問詞?

この文は前の行からの続きで、

    Quelle est cette langueur qui pénètre mon coeur ?

となっているので、qui は関係代名詞になります。

pénètre は動詞 pénétrer (入り込む、しみ込む) の直説法現在三人称単数形。 

qui pénètre mon coeur は、直前の cette langueur を修飾しているのことになるので、

    私の心に入り込むこのもの憂さは何だろうか

となります。


全体では、

    Il pleure dans mon coeur
    Comme il pleut sur la ville ;
    Quelle est cette langueur
    Qui pénètre mon coeur ?

    私の心に涙降る
    街に雨が降るように
    私の心にしみ通る
    このもの憂さは何だろう

というかんじです。


ここで、堀口大學の訳をみておきましょう。

    巷に雨の降るごとく
    われの心に涙ふる。
    かくも心ににじみ入る
    このかなしみは何やらん?


鈴木信太郎は、

    都に雨の降るごとく
    わが心にも涙ふる。
    心の底ににじみいる
    このわびしさは何ならむ。


そして、金子光晴は、

    しとしとと街にふる雨は、
    涙となって僕の心をつたう。
    このにじみ入るけだるさは
    いったいどうしたことなんだ?

です!